『ヴァン・ショーをあなたに』は下町の小さなビストロ・パ・マルを舞台にした料理ミステリ。
ヴァン・ショーとは、ホットワインのこと。三舟シェフがワケありのお客にふるまう、香り高い飲み物です。
今回は語り部であるギャルソン高築くんの視点を離れた物語が多く新鮮でした。フランス修行中の三舟シェフが出会った人々や、お客の視点から語られます。
「ヴァン・ショーをあなたに」
- 錆びないスキレット
- 憂さばらしのピストゥ
- ブーランジュリーのメロンパン
- マドモアゼル・ブイヤベースにご用心
- 氷姫
- 天空の泉
- ヴァン・ショーをあなたに
憂さばらしのピストゥ
気に食わない客にもちゃんと要望にこたえる三舟シェフに対して、後輩料理人は客に気づかれない「憂さばらし」を料理にこめてしまいます。
その時の三舟シェフのセリフがかっこいい。
「料理人はなんでもできる。前の客の残り物を使うことも、古い材料を使うことも、(中略)だが、だからこそ、それはしてはいけないことなんじゃないか。」
偽造した肉工場のジジィや某料亭のオバサンに聞かせてあげたい言葉です。
マドモアゼル・ブイヤベースにご用心
今回の話では今まで謎だった三舟シェフの修業時代や、ちょっとしたロマンスもありました。
ブイヤベースばかり注文する「マドモアゼル・ブイヤベース」と呼ばれていた女性客。
実は彼女は他店の女性シェフだったのです。
三舟シェフのブイヤベースにあこがれて店に来ていたマドモアゼル。でも、婚約中のオーナーと三舟シェフとの間で気持ちが揺れ動き、とうとう三舟シェフに告白を!
告白された後、動揺して料理ができなくなっちゃう三舟シェフがかわいかったです。それにしてもマドモアゼル・ブイヤベースはその後オーナーと結婚するんですかね?
しかし、私だったらローストチキンに指輪を入れてプロポーズするような男は願い下げですけれど 。
マドモアゼルも客のふりをしてブイヤベースを持ち帰ろうしたり、自分が頼んでおいて約束に遅れたり、自己中なんですよねえ。
挙句の果ては自分のマリッジブルーで三舟シェフを巻き込むマドモアゼル。ある意味、チキンに指輪を入れるような人とはお似合いかもしれません。