『犯行現場の作り方』の作者・安井 俊夫さんはミステリ好きの一級建築士だそうで、建築不可能と思われる名作ミステリの建築を図面に起こし、設計・施工の費用まで出してくれています。
十角館の設計
私は綾辻行人の館シリーズが好きで、すべて読んでいます。館シリーズには、犯行現場となる奇妙な館の平面図がついています。
しかし、もっと具体的に「誰か、あの館たちを立体化してくれないかな」と思っていました。
家の通路がすべて迷路の「迷路館」や、内部構造が複雑な「時計館」は難しそうだけれど、『十角館の殺人』だったら実際に作れそうだよな~と思っていたら、ついに夢が実現しました。といっても設計上でですが。
ちなみに、十角館の建設費用は、島購入費+インフラ費(電気・水道など)+4000万で、ほどかかるそう。
何も無い島に電気、水道を引くのはとてつもなく費用がかかるらしく、「館シリーズ」に登場する天才建築家・中村青司のように、相当な財力がないと無理らしいです。
長崎の無人島を買った、さだまさしさんも、島の購入費よりインフラ整備の方が高かったと言っていましたしね。
斜め屋敷の設計
斜め屋敷は、島田荘司さんの名作『斜め屋敷の犯罪』に出てくる、東西に傾いた構造の屋敷です。
作者いわく、「最も設計したくなかった館」だそうです。それでも物語の描写から、屋敷の高低差を割り出します。その差はなんと、1.25m!
一メートル以上傾いているんです。実際に泊まったら平衡感覚がおかしくなりそうですね。
しかし、読み終わるとこの高低差こそが物語の鍵であったと気付かされるのです。
『犯行現場の作り方』では、他にも横溝正史の『本陣殺人事件』など、有名ミステリの犯行現場である屋敷が設計されています。
非日常的で不可思議な屋敷を、現実の設計で作り出してしまうのがなんともユニークな企画の本でした。
ぜひシリーズ化して、他の館シリーズや京極堂シリーズなんぞも取り上げて欲しいものです。