『営繕かるかや怪異譚』は、家にまつわる怪異短編集。家の怪異を「営繕」という修理で折り合いをつけてゆく物語です。
怖いのが苦手な私にも読みやすいホラーです。
家にまつわる怪異
以前に読んだ『菓子屋横丁月光荘』が家の「陽」を描いた作品なら『営繕かるかや怪異譚』はそれとは真逆の、家の「陰」の部分を描いています。
そういえば、昔のオカルト番組ではよく「家相が悪いと不幸が起こる」として、霊能者が間取りの悪さを指摘していました。
家というのはそれだけ「怖いもの」が潜んでしまうものなのでしょう。
先人たちはそうした怪異をお祓いや家相を整えることで避けてきました。しかし、現在では利便性と合理性が重視され、そこに「障り」が生まれることも…。
幽霊も怖いが人も怖い
しかし、営繕かるかやが出会う事件は、ほとんどは人間が怪異をつくりだしています。
虐待されたり、病気を放っておかれたりした霊は、今も苦しんだり怯えていたりして、どこか哀れを誘います。
本当に怖いのは幽霊ではなく、それを作り出してしまう人間なのでしょう。
払うのではなく、折り合いをつける
『営繕かるかや怪異譚』には、さまざまな怪異が出てきます。しかし、「営繕かるかや」を営む尾端さんには、それらの正体はわかりません。
彼は人の暮らしに障りがでると、家に修繕を加えます。しかしそれは、基本的には大工作業です。それでも家に手を加えることで、住人がつつがなく暮らしていけるようになります。
尾端さんはこう言っています。
良い疵もあれば悪い疵もある。古い家にはそんな疵が折り重なっているのですが、それこそが時を刻むということなんでしょう。
それは、相手を完全に滅するのではなく、異常に怖がるのでもない。疵を冷静に確認し、受け流して怪異との折り合いをつけることなんですね。
しかし、人は忘れやすいものです。疵の修繕をおこたると、いつかまた、なにか出てくるかもしれません。
私の家でも、頻繁に盛り塩を取り替えています。「何か」がこないように…。

