『プリンセス・トヨトミ』 万城目 学

大阪城 ファンタジー
大阪城

関東出身の私には、関西は不思議で魅力的な土地です。何が起きても不思議じゃない、関西にはそんな雰囲気を感じます。

たとえば京都では茶きん絞りの「オニ」が闊歩し、奈良では鹿が言葉をしゃべります。

そして大阪には人知れず伝えられた「国」があったのです…

『プリンセス・トヨトミ』あらすじ

大阪には、ひそかに作られた「大阪国」というシステムが存在する。その目的は、豊臣家の末裔を守るため。けれどその中心となる大阪国の「王女」自身は自分の出自を知ることはない。

「王女」の存在が危うい時、または大阪国が危機を迎えたときは、大阪に住む200万の男たちが立ち上がる。迎え撃つのは国の会計検査院。

明治に結ばれた条約から、大阪国に流れる国の補助金を不当とみなして追及してゆく。

著:万城目 学
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登場人物の伏線

登場人物はそれぞれ豊臣家にゆかりの人々の名前がつけられています。

「プリンセス」である茶子は茶々(淀君)で苗字の「橋場」は「羽柴」、豊臣秀吉の旧姓です。


「自分が起こした事件が、後々何を引き起こすかについて無自覚」という茶子の性格も淀君っぽいですね。


幼なじみの「大輔」は真田幸村の息子で最後まで豊臣家の一族につき従った人物。一方、会計監査院側は「松平」は徳川の旧姓で「鳥居」は家康の家臣、鳥居元忠かな。

そして、「旭」は豊臣秀吉の妹で家康に嫁した女性。徳川側にいながらも、もとは豊臣側という旭の立ち位置を考えると、「プリンセス・トヨトミ」での旭・ゲーンズブールの役割にぴったりな名前だと思います。

歴史と虚構の塩梅が絶妙

最初、「会計検査院」というお堅い国の機関と、とある大阪の中学校。一見、何の関連もない出来事がどう結びつくのか不思議だったのですが、見事に糸が繋がっていきました。

まさか会計検査という極めて現実的な組織が非現実的な「大阪国」に切り込んでいく様子や、大阪国が危機に瀕したときの発動の仕方が実に巧妙で面白かった。


ただ、私は女なので「男のみ」っていう大阪国のしくみにちょっと抵抗感がありました。

あとはお話のクライマックスがもっと盛り上がってもいいのになとは思いました。そこだけがちょっと残念。

ただ、大阪国について女性が関与してないかといえば、そんなことはないのですが。

過去と現在をつなぐ細い糸が縒りあって「歴史」をつくるとするならば、万城目さんのたくみに紛れ込ませた感じがします。

明らかに周りと毛色が異なるのに、違和感も確かにあるのに、「もしかしたらあったのかも」って思っちゃうんですよね。

映画版も原作をいかしつつ、ダイナミックに大阪国が描かれていて面白かったです。

ポニーキャニオン
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