『ほろよい読書』では、日本酒や果実酒、お酒の入ったお菓子まで。さまざまなお酒のスタイルが飲む人の人生を彩ります。
お酒を片手に、読みたくなる本です。
『ショコラと秘密は彼女に香る』織守きょうや
仲里ひなきは伯母に内緒で彼女の想い人の家を尋ねた。その相手は学生時代の友人で、伯母は奥様とも親友だった。
訪ねた家の奥様は、ひなきの訪問をたくさんのお菓子を焼いて楽しみにしていた。伯母がよく食べていたウイスキーボンボンから、昔の思い出を聞くうちに、ひなきは伯母の恋の真相を知ることに。
ちょっと変わり種のお酒を使ったお菓子のお話。ウイスキーボンボンやサヴァランといったお酒が入ったお菓子って、ちょっと大人で、秘密な感じがしますよね。
『初恋ソーダ』坂井希久子
果実酒づくりが趣味の40代の女性。果実とお酒を選び、ゆっくりと時間をかけて熟成させてきた。しかし、同僚と異なる自分の人生を振り返り、つい魔が差してバーの常連の男と家で飲むことに…。
初めて女の部屋に上がり込んで「酒をつくれ、ツマミを作れ」などど言ってくる男は最低ですね。お酒も男も、ほどほどのところでとどめておいた方がいいようです。
それにしても、苺やバナナまで果実酒になるのは知りませんでした。
『醸造学科の宇一くん』額賀澪
小春は造り酒屋を次ぐために醸造学科に進学したが、親の期待が重くて学生生活も憂鬱に感じていた。幼なじみでまたいとこの宇一は同じ大学の1年先輩でだが、家同士の仲が悪いく、あまり親しく口を聞いたことがない。
あるきっかけで小春が悩みを話すと、宇一は大学内を案内し、大学の面白さを語ってくれて…。
竹のおちょこを作って外で日本酒を飲むなんて、すてきな思い出になりそう。それでも不用意に恋にならない感じが好きです。
『定食屋「雑」』原田ひ香
さやかは夫の「食事時の晩酌」が許せない。そのため夫から離婚を突きつけられてしまった。さやかは離婚の原因が夫の行きつけの定食屋「雑」だと思い、その店で働き始めた。
最初は「雑」の甘ったるい味付けも、食事と一緒に飲む酒も敬遠していたが、働くうちに少しずつ味にも酒にも慣れてきて…。
食の価値観に自信があるさやかは「雑」味付けを直すべく、自分で勝手に調味料を作ってもっていくんです。
でも、そういうのって価値観の押し付けだし、それが夫をも追い込まれたんじゃないかな。親切の押し売りはO・ヘンリーの『魔女のパン』のように相手に不快感を与えるだけですし。
ちなみに私はパクチーが苦手なので、押し付けられたら多分キレます。
『barきりんぐみ』柚木麻子
バーテンダーの有野はコロナ禍の営業停止中。大学時代友人・大塚江理子に「きりんぐみ」のオンラインバーで酒を作ってほしいと頼まれる。
実は「きりんぐみ」は、大塚のママ・パパ友の集まり。保育園がコロナ禍で閉鎖になったため、日頃のうさを晴らすための飲み会だった。
最初は驚いた有野だったが、自宅にある材料でできるカクテルを提案する。
保育園や学校が閉鎖になった時の保護者の方々の苦労が忍ばれます。リモートでいろいろ楽しみ方を工夫していたステイホーム時代を思い出しました。