しゃばけシリーズも十周年。『やなりいなり』では、あいかわらず若だんなと妖怪たちの賑やかな日常が描かれています。
今回は一話ごとに、お話に関連する料理やお菓子のレシピが掲載されていて、実際につくることもできます。
レシピの時間をはかるところで「鳴家(やなり)に60数えてもらう(1分)」と書いてあるのがかわいい。ほんとに鳴家が数えてくれたらかわいいだろうな。
前回の『ゆんでめて』のような切なくて悲しい話は少なく、若だんなが幽霊や神々、魔物たちのやっかいごとに巻き込まれていき、それを解決してゆきます。
こいしくて
若だんな住む通町が騒がしい。恋の病が町を覆っているらしい。そのせいで、疫病神たちから相談を持ちかけられるハメになった若だんな。
原因を探っていくうちに、結界の守り手である橋姫がいなくなったせいで、普段入れない神や妖怪が出入りしているせいだと気づく。
どうやら橋姫の失踪には、自身の恋する相手を守るためらしい。その相手とは…。
ここでも若だんな、疫病とはいえ、神様たちの世話をやいてあげます。
こうして読んでいると日本の神様は人間ぽいところがあるよなあ。まあ、それがまた魅力なのですが。
やなりいなり
若だんなの母親・おたえの守狐たちがつくった「やなりいなり」が好評で、みんなで卓を囲んでいると、どこからともなく手が伸びてくる。話を聞くとどうやら迷い幽霊らしい。
熊八と名付けられた陽気な幽霊(?)は、なぜか長崎屋から離れようとしない…。
やなりのお稲荷さんがかわいいです。つくってみたくなる。
からかみなり
若だんなの父・長崎屋藤兵衛が三日も店に戻らない。妖怪たちは勝手な推測を繰り広げるが、若だんなは心配でたまらない。
兄やたちに外出を止められているのでしかたなく、家で父親の行方を推理することに。妖怪たちのもたらす情報から、どうやら藤兵衛は人でないものと関わっているらしい…。
不思議な事にうとい藤兵衛旦那。ま、それだからこそ大妖の血を引く妻おたえや若だんなのそばにいても動じないのかもしれませんね。
長崎屋のたまご
若だんなが鳴家と空を眺めていると、突然空から青色の玉が落ちてきた。若だんなが目を話した隙に鳴家たちが玉を逃してしまい、追いかけてゆく。
一方、その玉を追って空に住む魔たちが降りてくる…。
鳴家が何かを追いかけるのは『おまけのこ』から定番ですね。小さい鳴家がきゅわきゅわと屋根を渡る姿を想像するだけで楽しくなります。
あましょう
久しぶりに栄吉の奉公先へ菓子を買いに行く若だんな。栄吉とつもる話もしたかったのに、別のお客のケンカに巻き込まれてしまいます。
お客の新八と五一は親友同士。けれど、五一が新八の妹との縁談を断ったため、新八は妹の婚礼のために、持参金付きのわけあり娘をもらうことになった。
それが元でで二人はケンカを始めるのですが、実は五一の破断の理由は、新八たちを思いやるゆえのことだったのです。
親友同士のすれ違いに自分と栄吉を重ねあわせて、若だんなはちょっと寂しくなってしまいます。
今回は比較的明るい話が多いのに、やっぱりしゃばけシリーズにはどこか「切なさ」が漂います。
命短い人間と妖怪たちや、人間同士でもいつか別れがやってくる。そんな寂しいような、切ない思いを含みながらも、若だんなは、今をせいいっぱい生きているんだろうな。
「ゆんでめて」で進むはずだったもう一つの未来(時の神様の手違いによる)のエピソードも少しでてきます。友人・七之助さんの嫁取りはどうなるんでしょうね。
なくなってしまった若だんなの恋も復活するのでしょうか。

