『カラフル』は阿部暁子さんの青春小説。障害を持つ六花と挫折を味わった伊澄が、お互いを理解してゆく物語。
本屋大賞を受賞した『カフネ』に劣らない名作かもしれません。
『カラフル』あらすじ
入学式当日、駅でひったくりを捕まえたことで知り合った六花と伊澄。
しかし、伊澄が何気なく放った「あんた車椅子なんだから」の言葉に「私は車椅子じゃない、車椅子ユーザーです」とピシャリと言い返す六花。
ある雨の日、六花が隠れて歌っている場面に遭遇した伊澄は、六花の夢がミュージカル俳優だったことを知る。でもその夢は病気でもう叶わない。
伊澄もまた事故による怪我で陸上を断念した過去があった。秘密を打ち明け合うことで投げやりだった学生生活が色づいていくのを感じる伊澄。
しかし、学校の登山イベントに六花が参加を表明したことで、クラスに波紋が生じてしまい…。
差別について
神様は扉を閉める時、別のどこかで窓を開けてくださる
これは六花の好きな『サウンド・オブ・ミュージック』のセリフで、夢を絶たれた六花は新しい窓を探しはじめます。そんな姿に触発され、彼女を意識し始める伊澄。
でも、六花が登山イベントに参加しようとすると、クラス内から反対の声が。理由は「車椅子ってわからないし、責任取れないから」。
様々な意見を戦わせるクラスメイトたち。伊澄のことを好きな彩花は、なんとか六花を排斥しようとします。そこへ担任の矢地先生が現れてディスカッションに。
この先生のセリフがすてき。
私たちが理解し合うのは本当に難しいことです。(中略)対話し、わかりあおうとする思いがある限り、それは絶望にはなりません。
ここまでこじれると、いじめが起こりそうなものですが、でも基本みんないい子たちなんですよ。漫画『スキップとローファー』の仲間たちみたいな。
先生も最初は六花の扱いに戸惑っていたのに、上司にもかけあってイベント参加を後押ししてくれます。
話し合うことで、みんなにも新しい窓が開かれたんでしょうね。
障害者へのいじめを描いた『聲の形』のクソ教師に爪の垢を煎じて飲ませたいわ。
『カラフル』と『カフネ』
『カラフル』には、その後の『カフネ』につながるエピソードがいくつかあって(家事代行とか)、この物語があったから『カフネ』が書かれたのかも。
『カフネ』の薫子も『カラフル』六花も、ともに努力家で人生を切り開いてきたのに突然、「努力では不可能なこと」を人生で突きつけられてしまいます。
六花はミュージカル俳優を目指し、不屈の努力でレッスンに取り組んでたのに、病気のために夢が閉ざされてしまう。
でも、六花は傷ついて、周りも傷つけて、そこでまた新たな努力を始めるんです。一方の薫子は不妊治療の失敗という現実を突きつけられて酒浸りに。
二人を単純に比べることはできないけれど、「努力では不可能なこと」が起こると、成功体験が多い大人の方が挫折に弱いのかもしれないなあ。