『定食屋「雑」』は、もともとお酒のアンソロジー『ほろよい読書』に掲載された短編。この本では定食屋「雑」のその後が語られます。
『定食屋「雑」』あらすじ
食に対する価値観の違いから、離婚を要求された沙也加。その原因を探るべく夫のいきつけだった定食屋「雑」で働きはじめた。
夫好みの甘い食事や食事の際の飲酒も受け入れたものの、夫の決意は変わらず離婚話は難航。
定食屋「雑」の店主・雑(ぞう)さんは沙也加との距離が今ひとつ掴めない。それは過去の従業員とのトラブルが思い起こされるから。
一緒に働くうちに沙也加と雑さんの関係がうまく行き始めた矢先、コロナ禍のため店は休業を余儀なくされ…。
定食屋「雑」を巡る人々
今回、短編では語られなかった雑さんの人生や定食屋の歴史、沙也加の離婚の顛末などが明らかになります。
雑さんのルーツやこれまでの人生が定食屋「雑」の味わいになったのかもしれません。一見、雑にみえる定食屋「雑」の料理。
ですが、雑さんと工夫を凝らし、安くて美味しいメニューを作り上げていくんです。
からあげの粉の工夫、カレーの玉ねぎの炒め方など、読んでいるとご飯が食べたくなります。
前作から続く沙也加と夫との離婚問題。言い出した夫もひどいけど、沙也加も食べ方の多様性を学んだとはいえ「許す」って感覚だし。
この二人、やっぱり別れたほうがいいと思う。
美味しい料理があれば、なんとかなる
コロナ禍に入り、「雑」には嫌がらせの張り紙が貼られ、心が折れてしまった雑さん。
けれど店を休んで帰った故郷で、もらったおにぎりに勇気をもらい、店を再開する決意を固めます。
この頃にはすっかり逞しくなった沙也加は、雑さんの右腕として活躍。そんな彼女の姿をみた雑さんは、
みんな、収まるべきところへ収まるのかもしれない
そして、どんなにしんどいことがあっても、美味しい料理があれば、なんとかなる。新しい「雑」の出発に幸あれ。
『定食屋「雑」』が掲載された『ほろよい読書』。他にもお酒にまつわる話がいろいろ。作家によって個性があって面白いです。
