若い人たちの間では、デジタルとは真逆の、フィルムカメラや活版印刷が流行っているのだとか。
『活版印刷三日月堂』は、そんな手に取ることができる「もの」を活字に託して伝えているのかもしれません。
『チケットと昆布巻き』
大切な場所の話
観光雑誌の記者・竹野は、同級生たちと自分を比べて引け目を感じていた。
そんな時、三日月堂を取材することになり、竹野は弓子さんに「どうして活版印刷をはじめたのか」と質問をする。
すると、弓子さんから活版印刷をはじめた意外な理由が語られます。
家族が早くに亡くなってしまった弓子さんにとって、三日月堂は弓子さんが家族とつながっていられる大切な場所だったんですね。
三日月堂はお客さんとのつながりが深いし、関わる人が多くて忘れていたけれど、弓子さんは天涯孤独なんですよね。
『カナコの歌』
家族の思い出
聡子は弓子さんの母・カナコさんの同級生。ぐうぜん「めぐりん」に掲載された三日月堂と弓子さんの記事をみつける。
彼女は三日月堂を訪れ、カナコさんの生きていた思い出を伝えます。
闘病のこと、死の恐怖から逃れるように書いていた短歌のこと。
弓子さんはお母さんを早くに亡くしたため、あまり思い出がなかった。でも、こうしてお母さんを知る人から伝えられることで、思い出を追加してゆくことができたんです。
聡子さんにとっても、カナコさんのことを思い出せるいいきっかけになったようです。
人は、思い出を作り出すことができるんですね。
自分のためにも、誰かのためにも。
『庭のアルバム』
道を見つける
母親がもっていたカナコさんの歌カードに興味をもった高校生の楓。
学校生活に馴染めない彼女は三日月堂のワークショップをきっかけに、弓子さんからイベント用のカードのデザインを任されることに。
楓がおばあちゃんの家の庭でスケッチをしていると、苦手だったおばあちゃんの意外な一面を垣間見ることができて…。
おばあちゃんと孫の交流は『西の魔女が死んだ』を思い出しました。
楓さんも弓子さんと活版印刷に出会うことで、自分の進むべき道を見つけられたみたいです。
『川の合流する場所で』
新しい流れ
弓子さんが活版印刷のイベントで出会った盛岡の本町印刷の会長とその親戚の青年・悠生。
それが縁となり、弓子さんは機械をみるため岩手へ向かう。弓子さんには機械の視察のほかにもうひとつ目的があって…。
そこでいよいよ大型機械を動かすことに。そこには悠生の祖父である前会長の込めた思いが活字に組まれていました。
それを形にすることで、悠生にも弓子さんにも新たな流れがきたのかもしれません。
願わくば、人をつなぐ手を持つ優しく孤独な女性に、幸せが訪れますように。
『活版印刷三日月堂』とコラボした作られた『大人の科学マガジン 小さな活版印刷機 (学研ムック 大人の科学マガジンシリーズ)』。
物語に登場した「テキン」での活版印刷が自分でもつくれます。ひらがなとカタカナだけですが、これからの季節、年賀状に活版印刷でひとこと添えるのにもいいですね。
