『マカロンはマカロン 』ミステリーというには、あまりにもやさしく、温かい物語の数々。
どの物語もテーマとなる料理があり、そのどれもが美味しそう。
装丁もフランス料理のメニュー風に、フランス語と日本語で書かれています。
以下、気になったものの感想を。
マカロンはマカロン
三舟シェフは先輩の羽田野さんから相談を受ける。一緒に店に来たパティシエールの岸辺さんがあるお菓子とメッセージ「マカロンはマカロン」を残して姿を消したという。
羽田野さんは、彼女のメイクや香水を注意したからではないかと心配するが、それに対する三舟シェフの答えは…。
日本でマカロンというと、色鮮やかなかわいいお菓子ですが、本番フランスでは、地味な色合いや、形も様々なバリエーションのマカロンがあるそうです。
日本で出回るマカロンは、マカロン・パリジャンという一種類なのだとか。
色鮮やかなマカロンばかりがもてはやされる。それを、若く女性が着飾った状態になぞらえて示す三舟シェフ。
料理界もですが、世の中まだまだ男性上位な世の中です。若くてきれいな女以外は女ではないと感じることも多いですから。
タルタルステーキの罠
牛の生肉を使ったタルタルステーキ。特に妊婦には寄生虫トキソプラズマの感染の可能性があるため、細心の注意が必要なメニュー。
ある時、「タルタルステーキをメニューに載せて欲しい。」という風変わりな予約が入る。
やがて現れた女性客たちは、タルタルステーキを注文する。そこで姑と思われる女性が、妊婦にタルタルステーキの一部を連れの妊婦に分け与えてしまい…。
せっかくの料理が何らかの陰謀に使われたのでは…と落ち込む高築くんでしたが、一ヶ月後、予約した女性が一人で現れてタルタルステーキの真相を語ります。
三舟シェフの「人が憎まれるなら、タルタルステーキが憎まれた方がいい。」というセリフがすてきです。
三舟シェフは単に料理をつくるだけでなく、お客さんに最高のかたちで提供し、喜んでもらえることを心情としているのですね。
だから、ビストロ・パ・マルは居心地のいい空間なのでしょう。ああ、パ・マルに行ってみたい…
ヴィンテージワインと友情
パ・マルに若いグループが来店し、次の予約の際にワインの持ち込みを依頼される。
やがてグループのうち、一人の女性が高級なワインを持って現れる。その女性・嗣麻子の家は裕福らしく、ワインも家のものを持ってきたという。
それを快く思わない遙香という女性は嗣麻子を嫌い、彼女のワインの持ち込みを非難するが、実は…。
友情は難しいものです。聞き心地の良い言葉だけを言っていても、裏では相手を蔑んでいる友人と、嫌なことは嫌だとはっきりという友人。
そのどちらを選ぶのは自分次第。
レストランではワインの持ち込み料金をを抜栓料というのだとか。
こんなシステムがあったこと、初めて知りました。けれども持ち込みワインはつい飲みすぎてしまうらしいので、ご用心を。