『タルト・タタンの夢』を読むと、フランス料理が食べたくなる。
おいしくて楽しい料理ミステリです。
下町の小さなビストロ、「パ・マル」。シェフの三舟さんは長髪を後ろに束ね、ひげを蓄えた風貌はサムライを思わせます。(私は笑い飯の西田さんを想像しましたが)
料理とミステリといえば、シェフが次々と殺される『料理長殿、ご用心』が印象的だったのですが、『タルト・タタンの夢』ではそんな大事件は起こりません。
日常の中に潜む小さな事件を、料理を通じて三舟シェフが解決していきます。
『タルト・タタンの夢』
・タルト・タタンの夢
・ロニョン・ド・ヴォーの決意
・ガレット・デ・ロワの秘密
・オッソ・イラティをめぐる不和
・理不尽な酔っぱらい
・ぬけがらのカスレ
・割り切れないチョコレート
ガレット・デ・ロワの秘密
お気に入りの話の一つが「ガレット・デ・ロワの秘密」です。物語に登場する料理の中でガレット・デ・ロワが一番わくわくするお菓子だったのと、真相がほっこりとしてかわいらしかったから。
ガレット・デ・ロワは1月に食べられるお菓子で、中にフェーブと呼ばれる小さな陶器が入っています。
フェーブが入っているガレット・デ・ロワを当てると、その日一日王様になれるので必ず紙の王冠がセットでついてくるのだそう。
中に入っているはずのフェーブが行方知れずになったというちょっと不思議なミステリが、ガレット・デ・ロワのわくわく感を倍増させてくれます。
割り切れないチョコレート
こちらは切ないお話。ビストロ・パ・マルで言い争う男性はショコラティエで、パ・マルで出されるチョコレートを酷評します。
後日、その店のチョコレートを食べてみると、その箱は何故か、割り切れない数(素数)で売られていた。という物語。
男性の真意と、なぜ割り切れない数のチョコレートを売り出したのか。
その理由がとても切ない、でも温かい物語です。
ドラマでは玉置玲央さんが演じていました。