食堂を舞台にした小説といえば、食事と働く喜びと癒しをテーマにした「かもめ食堂」が思い浮かびます。
しかし、「食堂かたつむり」は同じ食堂を舞台としていても、そのアプローチの仕方は全く異なります。
『食堂かたつむり』あらすじ
主人公の倫子は、恋人に部屋の荷物をすべて持ち逃げされ、たったひとつのこった祖母の形見のぬか床を手に、故郷に帰る。
長い間不仲だった母に頼みこみ、実家の片隅で「食堂かたつむり」をオープンする。彼女のつくった料理はやがて評判をよび、人々に喜びを与えるようになる。
料理を通じて学ぶ生と死
料理を通じて生と死という厳粛なテーマを、やさしい料理と田舎の美しい風景をベースに書かれていて、読んでいて「癒される」というよりは「考えさせられる」に近いお話でした。
終盤、かわいがっていた豚を主人公が自ら屠り、食材にかえていく場面は厳粛で神聖な雰囲気さえ感じられます。
食べるということは他の生物の命をいただくこと。
そんな当たり前なのに、忘れていた、あるいはフタをしてきた現実を改めて考えさせられる作品でした。
ただ、ストーリーが少し強引な部分もあるかなと。
私は料理が下手なせいか、ここまで料理に対して盲信的な主人公にいまいち共感できませんでした。
そして、なぜだかいきなり奇跡的に人々を救う料理を作れちゃうのも唐突でした。
食堂はらくらく軌道に乗りますし、長い間、確執があった親子ってそんなに簡単に打ち解けないと思うのですが…。
ポチップ