『そんへえ・おおへえ―上海生活三十五年』は、上海内山書店での日々を綴った随筆。
大正時代、上海でひとつの本屋が開業しました。夫の行商の留守に妻が内職がわりに勤しむための、小さな書店でした。
それが後に上海在住の日本人、魯迅など中国の著名人が集まる一大サロン、有名な「内山書店」の始まりでした。
伝説の内山書店、その始まり
当時の中日文化交流のサロンとしての役割をになった内山書店・その創業者である内山完造氏の上海での出来事を綴ったのが『そんへえ・おおへえ―上海生活三十五年』です。
内山書店創業のエピソードや氏が行なった広告手法、書店以外に手がけた日本語学校の創設など、当時の内山書店と、内山完造氏の体験談が書かれています。
岩波新書の特装版の装丁も美しく、レトロ上海好きには、手元に置いて楽しみたいと思える一冊です。
戦争当時は家の近くで銃撃戦が起こるなど、危なかった体験も書かれています。
そんへえ・おおへえとは
「そんへえ・おおへえ」とは、上海を現地の発音で聞き取ると、こう聞こえるのだとか。
また、「おおへえ」とは、上海の下海地区を同じく現地発音読みしたもの。なんだか、レトロでノスタルジックで、どこか優しくなつかしい響きです。
内山完造氏が暮らした当時の上海は、きっとこの言葉「そんへえ・おおへえ」の音のように、おおらかだったのでしょうね。
旧仮名使いの古い言葉は、読みづらい部分もあるのですが、かえって古き良き時代への憧れが駆り立てられます。
内山書店を訪れた作家たち
内山書店には、日本の文壇からも多くの作家が訪れました。谷崎潤一郎は『上海交遊記』の中で、内山氏が中国の作家たちとの交流会を開いてくれたことを描いています。

