『墨のゆらめき』は書家とホテルマンの代書屋コンビが繰り広げる、奥深い言葉と書の世界。
オーディオブック・Audibleで発表後、単行本化されたオーディオファースト小説。
朗読は声優の櫻井孝宏さん。登場人物全員とナレーションまで一人で演じ分けています。
『墨のゆらめき』あらすじ
ホテルマンの続力(つづきちから・チカ)は、招待状の宛名書きを依頼するため筆耕士である遠田の元を訪れる。遠田薫は技巧に優れた書家だが、いささか下品で強引だった。
チカは遠田に強引に巻き込まれるかたちで、手紙の代筆を引き受けることに。遠田と交流が続くうちにチカは書に魅力を感じ、遠田とも奇妙な友情を感じるようになる。
しかし、突然、遠田はホテルの筆耕士の仕事を辞めるという。理由を尋ねるチカは遠田の過去を知ることに…。
ブロマンスなバディ小説
『まほろ駅前多田便利軒』の多田と行天、『神去なあなあ日常』のヨキと勇気など、三浦しをんさんの作品にはこうした男同士のバディがよく登場します。
しかし正直な感想を言うと、この作品、最初は苦手でした。強引なイケメン遠田と巻き込まれタイプのチカとの関係はなんだかBLのようで、BLが苦手な私には少し抵抗があったんです。
(三浦しをんさんがBL愛好家ですし)
ただ、読み進めるうちに書の奥深さやバディ小説として楽しめるようになりました。欲を言えば、代書に関してはもっと他のエピソードも読みたかったな。
代書屋に関しては今後、続編を書いてほしいです。
Audible版『墨のゆらめき』
『墨のゆらめき』はオーディオファーストと呼ばれるAudible書き下ろし小説。Audible発表後に単行本化するシステムです。
作者の三浦しをんさんは音で表す物語に「あえて」書の世界を選んだそうです。朗読の素晴らしさも相まって頭の中で流麗な文字を想像することができました。
朗読は声優の櫻井孝宏さん。
やはり一流の役者の朗読はすごい。(まあ、過去にイロイロあったとしても、そこはそれ…)
遠田やチカといった主要人物はもちろん、モブ役に至るまで個性を演じ分けているんです。
声優の中には、異性の声がうまく表現できない方もいたのですが、さすがは櫻井孝宏さん。小さい女の子の声から年配の女性まで、異性の声も軽やかに演じ分けています。
『墨のゆらめき』はチカ視点で描かれているのですが、ナレーション部分とセリフ部分でも演じ分けられていました。