朝井まかてさんの『眩くらら』は、絵師・葛飾応為の画業と人生を描いた作品。女絵師・葛飾応為は北斎の弟子であり娘。
北斎の画業を傍らで支え、自らも絵の道をつき進んでいきます。
一本の映画をみたような読了感
物語の冒頭、お栄は夫との暮らしに辟易し、外に出たついでに、ふらっと婚家を逃げ出してしまう。そこから北斎のもとに戻り、北斎を助けながら、ひたすら絵の道を極めて行きます。
北斎のもとに出入りしていた浮世絵師、善次郎(渓斎英泉)との絆と、ひとときの情。
甥・時太郎の不行状に悩まされ、母を看取り、最愛の盟友・善次郎との別れ、そして北斎を看取り、自らも晩年を迎える…。
善次郎の野辺送りを足を怪我しながらも追いかけてゆく場面、そこがお栄の思いを反映しているようで、とても好きです。
善次郎は男女の仲を超えた、絵の道を目指した盟友でもあったのでしょうから。
やがてお栄は、老年の北斎を看取ったあと、武家へ養子にいった弟の家にやっかいになるのですが…。
物語の最初と最後が同じ行動で完結しているんですね。
年をとっても新たな世界へ挑戦していく、心の赴くままに。豪胆で繊細、まさに自らの絵のような人生でした。
浮世絵を傍らに読みたい本
『眩』では、北斎とお栄の描いた浮世絵や肉筆画がでてきて、その制作の様子が描かれます。それはまるで、本当に絵が描かれている様子を垣間見ているような、息を呑む制作風景。
お栄や北斎が命をかけて描いたものが、今、現代の私達が見ることができるのって、本当にすごいことだと思います。
お栄の話では江戸文化研究家の杉浦日向子さんの『百日紅』が有名ですが、『眩 くらら』は、百日紅のその後、お栄が嫁に行ったところからはじまります。
『眩 くらら』は宮崎あおいさん主演でドラマ化もされています。

