沖縄の島を舞台にした恋愛小説、『カフーを待ちわびて』の外伝『花々』。
純粋な続編ではなく、明青や幸と交流のあった女性たちを主人公にした物語です。
独立した物語になっているので『カフーを待ちわびて』を読んでいなくても問題なく読めます。

『花々』あらすじ
ダイビングショップでアルバイトをしている純子は故郷・岡山と家族を捨てて与那喜島にやってきた。
島のリゾート開発にともなう立ち退きで仲のよかった幸や、バイト仲間の奈津子など、つぎつぎと島を離れてゆく。
与那喜島に住みつく純子とは逆に、島を捨てて都会で仕事をこなす成子。『カフーを待ちわびて』の主人公、明青の初恋の人。
リゾート開発にともない、両親の家の立ち退きで久しぶりに島をおとずれた成子。幼なじみ・照屋から開発計画を聞き、自分なりの島おこしを企画。
友人となった純子に他の島のリサーチを頼み、自らも島巡りに乗り出す。けれど。加計呂麻島で出会った知花子に諭され、自分にしかできないことを探すことに。
成子に頼まれたリサーチを兼ねて奄美諸島を旅する純子。そこで出会った漁師の開大と、ノロの母親の営む民宿に泊まるが、そこで「大切な人が死にかけている。」と聞かされる。
母の死をきっかけに「旅人」を廃業した純子に、島人や旅人たちから時折便りが届くようになった。
やがて、その中には純子も、読者たちも待ちわびていた「カフー」が届き…。
映画『カフーを待ちわびて』には、『花々』のエピソードも加えられています。
旅人のさみしさ
いろんなものを捨てて、沖縄の島へやってくるものの、完全な島人になりきれない「旅人」たち。その姿には一抹のさみしさを感じます。
確かに、リゾートは地域に利益をもたらすものです。だから、外部の人間が理想論を唱えても実際にすんでいる人々には響かないんですよね。
成子さんは、自分のことを好きな男に対して薄情なところがある人で。夫に対してもひどいことを平気で言ってしまいます。明青に対しても罪つくりだったしな。
そんな成子さんも、離婚を経たりいろいろな人との出会いで少し変化がでてきているようです。
ぶっきらぼうの開大と純子の交流は、『天国はまだ遠く』の千鶴と田村さんを思いだします。
その後、純子に届く開大の手紙には、自分の釣った魚の写真が送られてきます。それがなんとも愛らしくて冒頓ですてきなんです。
この二人、どうにかなってほしいような、この交流のまま続いてほしいような…。