映画を愛する人々に起きた、キネマの神様からの奇跡『キネマの神様』。
『キネマの神様』あらすじ
円山歩は、都市開発会社でシネコン開発担当者だった。しかし社内のトラブルに巻き込まれプロジェクト半ばで退社に追い込まれる。
同じ頃、父親ゴウが心臓発作で倒れた。そのため、実家に戻った歩は父の趣味である映画DVDを見て何気なく感想をしたためる。
その文章がきっかけとなり歩は老舗映画雑誌「映友」の編集部へスカウトされることに。しかし、編集部の内情は火の車。
起死回生の企画としてホームページでゴウの映画評を掲載すると口コミで人気が広がり、やがて海外の映画評論家の目に止まり…。
映画と映画館への愛
作中、映画と映画館への深い愛情が感じられる文章がすばらしい。
現在、作中に登場する「テアトル銀幕」のような名画座は数えるほどしかありません。
でも、そこへ行くと、「映画を見る」だけではなく、「映画館で映画を見る」というもう一つの娯楽があるのです。
そんな名画座についての文章は、まさにそう!と、何度も頷きながら読みました。
とりわけ名画座は昔ながらの「村の鎮守」みたいな場所だ。(中略)短い夏の、胸が苦しくなるような懐かしさ
スプリングがきしんだ椅子、古い映画のポスター。売店のガラス張りのソーダやキャラメルが並んでいる。
古い名画座はシネコンにはないワクワクした空間がありました。まさに「村の鎮守」のお祭りのような雰囲気なんです。
『キネマの神様』には、そうした名画座と映画に関する描写がすばらしく、そして叙情的なんです。読むと映画がみたくなります。
お帰り キネマの神様
『お帰り キネマの神様』は続編ではなく、映画のノベライズを原田マハさんが手掛けています。