『外科室』は泉鏡花が明治時代に発表した恋愛小説。儚くも美しい、刹那の恋が描かれます。
その『外科室』を現代のイラストレーター・ホノジロトヲジさんが独特の解釈で描いたイラストが魅力的な一冊です。

『外科室』あらすじ
やんごとなき身分の伯爵夫人が病に冒されるものの、手術での麻酔を拒む。「私は一つ心に秘密がある」ため、麻酔でうわごとを聞かれたくないからだ。
執刀医の高峰は、夫人の意図を汲み麻酔を使わず執刀する。
夫人「でも あなたは、あなたは、私を知りますまい!」
高峰「忘れません」
やがて夫人は亡くなり、高峰もまた同じ日に命を落とした。
刹那の恋
夫人と高峰は9年前に一度だけ出会っています。しかし二人は一度も言葉をかわすこともなく、ただ一度姿をみただけ。
たったこれだけ。
でもそれが、一生に一度の刹那の恋。そして、その秘密に殉じて二人は逝くのです。なんて切なく、美しく、残酷なのでしょう。
泉鏡花の繰り返し訴える美麗な文章が、切なく美しい恋の模様を彩っています。
ホノジロトヲジさんの『外科室』
『乙女の本棚』は毎回、小説を現代風に解釈したイラストが楽しみなのですが、ホノジロトヲジさんの『外科室』もまた、すばらしいイラストでした。
- メスや注射を表した伯爵夫人の装束
- 主人公の二人だけが仮面を被っている
- メスを入れた夫人の肌から、血潮をイメージした赤い衣装の少女たち
実際にはありえないのに、イラストが小説の世界を的確に表していているんです。この現代風解釈のイラストが、明治の文豪作品を身近なものにしてくれます。