泉鏡花の幻想的な世界を、現代のイラストレーター・しきみさんが表現した乙女の本棚シリーズ『夜叉ヶ池』。泉鏡花の幻想的な物語をしきみさんの美しいイラストが飾ります。
夜叉ヶ池 あらすじ
旅の学僧が山奥で行方不明の友人・晃と再会する。晃は妻の百合と共に、夜叉ヶ池の竜神との盟約を守る鐘つきとして、この地で暮らしていくという。
その鐘は日に三度鳴らすのを怠ると周囲の村里が水に沈むと言われている。しかし村人はもはや鐘つきを忘れていて、晃と百合だけは誓いを守っているのだった。
一方、夜叉ヶ池の竜姫・白雪は剣ヶ峰の恋人に会いに行こうとするが、眷属らに止められてしまう。勢い余って自ら鐘を壊そうとする白雪の耳に、晃の留守を心配する百合の歌が聞こえ、思いとどまる。
しかし、日照りに苦しむ村人たちは百合を生贄にしようとして…。
現実と幻想が交錯する世界
『夜叉ヶ池』は恋愛物語でありながらファンタジーでもあります。人の暮らしのすぐそばに人外の者が暮らしていて、自然と人、現実と幻想が共存している世界なんです。
それはきっと、生活の描写が丁寧だから物語にリアリティがあるのでしょう。
また、鯉や蟹、鯰など擬人化された眷属たちのキャラ設定も絶妙で、彼らのコミカルな行動が悲劇的な結末を和らげてくれています。
漫画家・波津彬子さんも泉鏡花の作品を漫画化しています。『夜叉ヶ池』のほか『天守物語』や『海神別荘』など、鏡花ワールドが美しく描かれています。こちらもおすすめです。
イラストレーターしきみさんによる令和版『夜叉ヶ池』
しきみさんの描くイラストでは、なんといっても白雪の描写がかわいらしい。キュートでおきゃんで現代風にアレンジされています。でも、物語の世界にぴったりなんですよ。
そのほか、蟹の関守に鯰の入道など、眷属たちもかわいらしい。
物語の場面を描いたイラスト、姫が動くと洪水が起こる様子を描いた絵は、まるで川の流れが裳裾(スカート)のよう。イラストだけではなく、構成やアイデアも格好いい…!
令和の夜叉ヶ池を見事に表現されています。