『成瀬は天下を取りに行く』は、滋賀県大津市を舞台にした青春小説。さすが本屋大賞をぶっちぎりで受賞したのは伊達じゃない。新鮮な面白みのある作品でした。
『成瀬は天下を取りに行く』の最初の舞台は2020年。コロナ禍真っ最中です。イベントや行事は軒並み廃止され、ステイホームが叫ばれていた時期。
しかし、そんなことで成瀬は止まらない。様々なことにチャレンジしていきます。
2024年本屋大賞受賞。
『成瀬は天下を取りにいく』 とは
主人公成瀬あかりは「200歳まで生きる」など、荒唐無稽な計画を立てては、それをコツコツ実行するちょっと変わった少女。
西武大津店閉店まで中継テレビに映る、M-1グランプリに出場する、高校入学で坊主頭にする…などなど。成瀬の挑戦は突飛で破天荒はあるものの、彼女なりの目算があり、努力を惜しみません。
成瀬は漫画『スキップとローファー』のみつみちゃんに通じるものがある気がします。みつみちゃんも空気を読まず、自分のやりたい事を決めたらズンズンと進んでいきますから。
ただ、成瀬は他人からどう見られるかということに頓着しない、どんな挑戦にも緊張しないというのが稀有なキャラクターですね。バディの島崎との関係もいい。
ふだんは成瀬が島崎を振り回しているようにみえて、実は成瀬が動揺するのは島崎の事だけなんですよね。
青春小説であり地元小説
大津に行って、琵琶湖でミシガンに乗りたい。単純にそう思えちゃうのがこの本の魅力ですね。
しかし、『雲を紡ぐ』の盛岡のように、美味しいものや美しい風景の描写があるわけではない。
琵琶湖とクルーズ船は出てくるけれど、成瀬の提示する情報はあまり観光的とは言えません。ひたすら地元のデパートやスーパー、公園について詳細に語られています。でも、それが面白いんですよ。
BSの本紹介番組『あの本、読みました?』でも特集されましたが、公園や西武大津店跡を聖地巡礼してみたいです。
続編『成瀬は信じた道をいく』も最高でした。
Audible『成瀬は天下を取りにいく』の朗読の方のお名前も「なるせ」さんなんです。漢字はちがうけれど。