『古代ローマの料理と食文化―現代に蘇るレシピ35種―』ローマ皇帝の料理人が残したレシピをもとに、古代ローマ料理を現代に再現したレシピ本です。
豊富なスパイスに肉や魚、豆や野菜、調味料も魚醤などが使われ、現代に劣らない豪華な古代ローマ料理。
古代ローマの人はけっこう美味しいものを食べていたんですね。もちろん、裕福な人に限られるでしょうけど。
サトクリフ作品と古代ローマ料理
古代ローマ料理といえば、『第九軍団のワシ』など古代ローマ時代のイギリス(ブリテン)を舞台にしたローズマリー・サトクリフ作品を思い出します。
サトクリフ作品の中には食べ物の描写が多く、パンやワインといったシンプルな食事から、子ヤギのミルク煮やデザートまで、とてもおいしそう。
古代ローマでは肉や魚、スパイスなど、征服した土地から入ってくる食材も多く、とても多様な食文化だったようです。
ローマ本国では豚や鴨、ラムなどの肉類と豊富な魚介が食べられていたようですが、ブリテンではヤギの臭みをミルクで消した煮込みなども食べられていたそうです。
なんでも蜂蜜
蜂蜜の使用頻度がとにかく高い。砂糖の精製技術はは中世からなので、甘みはもっぱら蜂蜜が使われていたそうです。
蜂蜜はスパイスといっしょにワインに混ぜたり、スイーツに使ったり古代ローマ料理に欠かせないものでした。
このレシピにも凝乳(チーズ)とアーモンド、蜂蜜のお菓子が出てきますが、ローズマリー・サトクリフの『ケルトとローマの息子』でも貴族の食卓にアーモンドを入れたケーキがでてきます。
『古代ローマの料理と食文化』によると、アーモンドケーキはアーモンドミルクと蜂蜜をつかったお菓子で、主に入浴後にたべられていました。
入浴はけっこう体力を消耗するので、少し濃厚なお菓子を食べることは、のぼせ防止だったのかもしれません。
また、蜂蜜は医療用として麻薬と混ぜて鎮静剤などにも使われていました。
キリスト教が広まると修道士が養蜂をおこなうようになります。養蜂のシーンは同じくサトクリフの『ともしびをかかげて』にも登場します。
魚醤と魚料理
ヨーロッパというと肉料理のイメージがありますが、地中海に面したローマでは魚料理も豊富で、レシピには牡蠣や鮪、ボラなどの魚料理がでてきます。
古くから魚醤も使われていました。塩やハーブを入れた「ガルム」といわれる魚醤は、さまざまな料理に使われています。
シンプルなゆで卵料理にもガルムが使われているのですが、きっと普通のゆで卵とはちがう、複雑で奥深い味になっているのでしょうね。

