森薫さん原作のアニメ『エマ』の監修をつとめた村上リコさんがまとめた『図説英国メイドの日常』。
この本はメイドたちの言葉や数々の資料から、当時のメイドがどんな風に働き、生きていったのかを紹介しています。
漫画『エマ』のようにはいかない、英国メイドのリアル・ライフ
英国メイドを主人公にした漫画『エマ』は、紳士階級とメイドの恋と、当時のメイドたちの生活が描かれています。
しかし、実際に19世紀から20世紀初頭の英国メイドの仕事は、漫画よりもかなりハード。
前に読んだ『英国メイドマーガレットの回想』にも書かれていましたが、ひどいときは一日、数十時間に及ぶ肉体労働。
それもクリスマスやパーティーなどがあると、超過勤務になるし、主人からくだされるクリスマスプレゼントは実用的で、嬉しくもなんともない…
など、メイドたちの声が取り上げられています。
あるメイドは、一日のうちでとてもこなせないであろう作業表をみて、主人にとってメイドとは
時計のようななめらかなリズムで動く、よく油をさした機械に似たなにか
だと感じます。
しかしメイドの職場環境は、仕える家の大きさによっても左右されます。
貴族の邸宅などでは、使用人たちに十分な食事をさせて、良い環境ではたらかせること自体をステータスと考えていたので、中流家庭よりも恵まれていたようです。
けれど、そうした上流の家庭で働くためにはそれなりのキャリア、もしくは紹介状が必要なのですが…。
英国版、メイドはつらいよ。
メイドとして働く女性たちは、大抵が貧しい子だくさんの家の娘達で、父親が失業をしている場合が多いのだとか。
過酷な労働で得た少ない給金の中から、彼女たちは家計を助けるために給料の殆どを親に仕送りしています。
メイドは職種によって給金以外の収入(チップや食材の換金、商店からの賄賂)があったため、そうしたお金で洋服をしたてたりしていたようです。
下級メイドは自分の身の丈にあった商人や軍人などを見つけ、結婚することでつらい労働から開放されます。
『英国メイドマーガレットの回想』にも、メイドの婚活の様子が書かれています。

しかし、主人たちに直接使える上級のメイドは、下手に結婚するよりも、働いていたほうがよい暮らしができるので、独身のまま務め上げて年金生活を送る人も多かったようです。
また、紳士階級との恋を成就させたメイドたちもいるにはいたのですが、社交界から拒絶されたり、結婚して子宝に恵まれても、その子が爵位を次ぐことができなかったりと、苦難の多い人生だったようです。