活版印刷三日月堂シリーズもいよいよ完結。これまで三日月堂に関わった人々も登場し、主人公の弓子さん本人の物語が組まれていきます。
私は前回の感想で「弓子さんが幸せになりますように」と書いたのですが、今回その答えがでます。
それは嬉しいような、もう三日月堂の人々と会えないのが少し切ないような、そんな気持ちです。
『星をつなぐ線』
長田はプラネタリウム星空館のリニューアルに際し、創業時の星空早見盤を復刻したいと相談される。そこで印刷に詳しい後輩の悠生のとともに三日月堂を訪れる。
その星座早見表は表の原版しか残っていない状態だったが、弓子さんが偶然が昔の星座盤をもっていたため、なんとか復刻にこぎつけることに。
『星をつなぐ線』て、すてきなタイトルです。
星座と同様に三日月堂も活版印刷で人と人とをつなげていきますね。
星も人も、線がむすばれ、つながっていくのは読んでいるこちらも嬉しくなります。
そして前作でも登場した悠生くんが再登場。長田さんとの会話でどうやら悠生くんは弓子さんのことが好きらしい。うまくいくといいなあ。
あ、でもデザイナーの金子さんはどうなるの?彼はちがうの?
『街の木の地図』
大学生の豊島つぐみはゼミで「川越の街をテーマにした雑誌」の製作・販売を行うことに。
自己中の男子、草壁くんと、引っ込み思案の女子・安西さんと同じグループになり先行きに不安を感じつつも取材のため川越へ。
3人は三日月堂に見学に行き、そこでの体験をきっかけに「活版印刷でつくる街の木の地図」をテーマに雑誌をつくることになる。
取材を通じてつぐみたちはなにか一つ、自分の中に確かなものをみつけたようです。
また、この章では以前『庭のアルバム』で登場した高校生の楓さんも登場します。
彼女もまた進むべき道がわからず、あがいていた頃からだいぶ成長していました。
若者たちが成長していく姿は読んでいて楽しいなあ。
そしてここで驚き情報。三日月堂と懇意のデザイナーの金子さんには別に恋人がいるとのこと。
お相手も以前登場した(『海からの手紙』)司書の小穂さんなんですって。
このふたりのなれそめも、外伝とかで書いてほしい…。
『雲の日記帳』
大学生たちがお世話になった古本屋『浮雲』の店主・水上さんのお話。
彼は古本屋を営みながらひっそりと暮らしていた。彼はかつて将来を嘱望された作家候補だったが、自分の言葉が人を傷つけてしまった経験から筆を折ってしまった。
ただ、店の冊子に書いている『雲日記』は評判が高く、三日月堂の弓子さんもスクラップしているほどだった。
あるとき、大学時代の友人・岩倉が訪ねてきたことで、水上の言葉を本にしたいと提案され、水上は自分の過去と向き合うことになる。
壮絶な過去を経験し、静かに人生を終わろうとしていた水上さん。
彼もまた、三日月堂と出会ったこと自分の人生を見つめ直そうとします。
水上さんは、亡くなった弓子さんの父親に状況が似ていて、2人が話すことですこし、お互いの悲しみや苦しみが昇華できたのでは、と私は思います。
この水上さんの「雲日記」を書籍化することが物語の最後の流れにつながります。
『三日月堂の夢』
これまでたくさんの人の思いを活字に組んで、手渡してきた三日月堂の弓子さん。
そのおかげで多くの人が救われ、自分の道をみつけることができたのですが、最終話は弓子さん自身の物語の道が決まります。
『雲の日記帳』で登場した水上さんの文章を活版印刷で本にすることになった。実は水上さんは余命わずか。彼が生きている間に本を作らなければならない。
けれどそのためには今の仕事をこなしつつ、悠生さん、アルバイトの楓さんにも無理をさせることにもなり、弓子さんは三日月堂の今後と、自分の人生の岐路に立つことに。
できあがった三日月堂のはじめての本。余命の少ない水上さんは、本のお礼にと店をを若者たちに託し、弓子さんにちょっとした魔法をかけて去っていきました。
すべてが終わった後、弓子さんは悠生くんに思いをつたえようと…。
このあとはぜひ、読んでみてください。こころがほっこりあたたかくなります。
