岸田奈美さんのエッセイ『国道沿いで、だいじょうぶ100回』。てきとうな「大丈夫」に救われることもある。
相変わらずの家族の面白エピソードから、面白トラブルまで。大笑いして、ちょっと胸にジンとくる。
人生の傍らに岸田奈美さんの本があると、とても息がしやすくなる。そんな本です。
ネタが追いかけてくる
この人、ネタを探しているんじゃない。ネタのほうが追いかけてきてるんだ…。
- 時間ギリギリの中、空港のトイレで札束の入ったリュックを拾う
- ふるさと納税で頼んだ桃が80個も届く
- ワクチン接種で言った医者はグラサンスキンヘッド、内装はバーそのもの
サバの骨にクレームを入れる話
私が一番笑ったし、考えさせられたのが「病院で骨抜きのサバを出されて怒り狂う人よ」というお話。
「患者様のお声コーナー」で奇想天外なクレーム
「サバの骨抜きは骨折した私への当てつけか」
「頭のないサンマは脳腫瘍の私への嫌がらせか」
と。いやいや、何言ってんの?こんなのカスタマーハラスメントやん!(ミスチルのサビに例えたここの描写が最高なので、みんな読んでほしい。)
後日、奇想天外クレームを母親に話したところ、意外な答えが返ってきたのです。
長引く治療に副作用、治らないかもしれない病気、夜中に眠れない地獄。患者さんは「サバの骨抜き」に文句を言うくらい、しんどいのだと。
受け止めて受け流すアンサー
そして、そんな無茶ブリのようなクレームに対し、病院側の回答がすごい。
- どんなに理不尽なクレームに対しても真摯に謝る
- きちんと各部署に裏を取り、事実確認
- 「今後は改善に務めるよう検討いたします」と回答
病院側は患者の意地悪も、孤独もわかっている。だから、どんば馬鹿げたクレームにも寄り添ってくれているんだと奈美さんは書いています。
Audible版『国道沿いで、だいじょうぶ100回』。紙の本も素敵だけれど、奈美さんのセリフや軽快なツッコミが音声で聞くと臨場感マシマシで楽しい。
小説『声』
このエピソードを元に、病院側の回答者側の視点で書かれた小説『声』。しんどいクレームに、回答者がどう向き合っていくかが描かれます。
「他者」への視点
タイトルの『国道沿いで、だいじょうぶ100回』は、線路に立ち入った男の人と、それを助けようとした母親らしき人に非難が集中したことを受けて書かれたお話。
ダウン症の弟、良太くんが小さい頃にやっぱり道路に駆け出してって、それを母親が命がけで止めていた過去。
そして、被害にあった方々へ「だいじょうぶ」と伝えるように。
岸田奈美さんは、「人は他人」ということを、すごく良くわかっている方だなと。
みんな、やっぱり、自分の都合で物を考えちゃうじゃないですか。人のせいで時間に遅れたら怒るし。
でも奈美さんてまず、「この人、どういう気持で行動したんだろう?」が真っ先に浮かぶから「だいじょうぶ」って言ってあげられるんだろうな。
自身のPodcast「岸田奈美のおばんそわ」のお悩み相談でも、まず相談者を否定せず、寄り添ってくれるんです。
Podcastの感想はこちら:世界にもし、100人の岸田奈美がいたら

