以前、広田レオナさん、吹越満さんご夫妻がテレビで、ご自分たちを「夫婦というより、双子の兄弟(レオナさんが兄だそうな)のような関係」だと例えてらっしゃいました。
はて?そんな言葉を以前、どこかで聞いたことがあるような…?
そうだ!山田詠美さんの『ラビット病』だった!
『ラビット病』とは
『ラビット病』は、愛を知らない風変わりな女の子と、心優しい黒人青年とのラブストーリー。
日本人の女の子、ゆりちゃんと、アフリカ系アメリカ人のロバート(ロバちゃん)の愛と試練(主にロバちゃんが)の日常を描いた連作短編。
二人が耳と呼んでいる餃子、バターにつけて食べる蟹、ロバちゃんのママが作るチキン料理など、作中の料理が美味しそうなのも魅力。
そして、その中に「双子届」という、不思議なお話があるのです。
双子届
あるとき、ラーメン屋に入ったゆりちゃんとロバちゃん。そこで彼らは、顔形から仕草まで全く同じ双子の老紳士に出会います。
老紳士たちから「君たちも双子なのだから、双子届を出さなければならない」と忠告される二人。
なぜ、性別も国籍も違うふたりが双子なのか?
そんな疑問はあるのですが、ゆりちゃんとロバちゃんの2人は本当に仲がいいので、きっとソウルメイトみたいなことなんじゃないかな、と。
愛とは、バターより鍋である
私が好きなエピソードは『ゆりの嫁入り』のお鍋の話です。
蟹を食べる時ロバちゃんは、ゆりちゃんが好きな鍋を用意すると、ゆりちゃんは困惑します。
というのも、ロバちゃんは蟹は溶かしたバターにつけて食べるのが好きなのに、ゆりちゃんの好みに合わせてくれるから。
早くに両親を亡くし、人を愛する行為が具体的にわからない(だから時々突飛な行動をする)ゆりちゃんは、ロバちゃんの行為を素直に受け取れないんですね。
ロバちゃんの家では、母親が子供たちの好みを聞き、調理法を順番に変えてくれていたのです。
そんな愛のある家庭に育ったロバちゃんだからこそ、ゆりちゃんをまるごと受け止めることができるのだろうな。
読むとほっこりとする、恋愛小説「ラビット病」。人を好きになるって、きっとシンプルなことなんでしょうね。
物語の中の架空の料理、作家の料理エッセイ、歴史の中の料理など。

