『友が、消えた』は、ザ・ゾンビーズシリーズの続編。読み終わった時、涙が溢れた。電車の中だったのに。
私にもスイッチが押されたのだ。彼らのように。
『友が、消えた』あらすじ
落ちこぼれ高校生、ザ・ゾンビーズ。女子校の学園祭へ侵入したり、ストーカー被害の女子大生を守ったりと冒険を繰り広げてきた。
しかし、仲間たちはもういない。
南方は大学生になり、誰とも群れず退屈な日々を送っていた。しかし、そこへ結城という学生が「消えた友達を探してほしい」と頼んできた。
最初は断っていたものの、南方はあるきっかけから依頼を受けることに。噂では消えた友人・北澤は学内最大サークルESSCに所属し、怪しい犯罪に手を染めているらしい。
ESSCのカリスマ代表・志田に話を聞くべく自宅を訪れると、「先客」が志田に襲いかかり…。
一歩を踏み出す覚悟
レイプ、覚醒剤、ヤクザなど、仲間たちがいた頃とは違い、ヘビーな事件が大学生の南方を襲います。
そして北澤の事件は、南方の過去にも関係してくる。思わず目を背けたくなる因果に、それでも南方は動くんです。本能のままに。
クソッたれな現状に対して一歩を踏み出すべく動き出す彼らに、スイッチが押される。
そうやって世界は影響しあって、新たな出会いへとつながっていきます。
南方のスイッチ
今回、舜臣や山下、アギーたち仲間は登場しません。でも、南方はひとりじゃない。
『SPEED』のヒロイン、佳奈子の友人・りつや、『レヴォリューションNo.3』に登場する吉村恭子、日雇いの元締め・ランボーさんたちが南方を助けます。
この恭子さんのセリフ、かっこいいですよねえ。
いつまでもあがいて、もがいて、闘って、間接的に色んなスイッチを押し続けて、少しずつでも世界を変えていきなさい。
恭子さんも以前は守られる存在だったけれど、南方たちにスイッチを押されたことで変わったんです。

シーソーの乗っかり方
今回、南方と真逆の存在として、志田が登場します。彼はゲームマスターであり傀儡廻であり傍観者。
彼が押すのは「スイッチ」ではなく「トリガー」なんでしょうね。それは直接的に欲望を刺激し、相手を破壊していくものという気がします。
金城一紀さんの『映画篇』にこんなセリフがありました。
この世界は見えないシーソーみたいなもので、悪い方に傾きすぎると、それに気づいた人がもう片方に乗っかってくれるから、なんとかうまくバランスが取れてるんだよね
私は、志田のシーソーの反対側に乗るのがだと南方だと思うのです。
欲望を司る志田の方が圧倒的に有利ですが、でも、それでも動き出した南方を止めることはできないでしょう。
きっと、勢いをつけてシーソーに乗っかってくるはず。