「おっぱいマンション」のネーミングが絶妙です。個性的な建物ってわかりやすい(そして下品な)あだ名がつけられますよね。
アサヒビール本社隣のう●こビルとか…。
この物語は「おっぱいマンション」という建築物が舞台ですが、読みどころはマンションに関わる人たちの思惑です。
『おっぱいマンション改修争議』あらすじ
その個性的な形状から「おっぱいマンション」と呼ばれるニューテラスメタボマンションは50年近く前、天才建築家・小宮山悟郎によって建てられた。
しかし老朽化が進んだため「解体か改修か」を決める住民会議が開かれることに。
建築家の娘、弟子、彼に人生を狂わされた住人、それぞれの思惑が交錯し、争議は難航する。そして、おっぱいマンションにはある秘密が…。
天才に振り回される人々
『おっぱいマンション改修争議』に出てくる人はみな、小宮山悟郎という「天才」と関わったことで面倒に巻き込まれていきます。
娘のみどりは父に反発してリフォームデザイナーに。解体派の市瀬は学生時代に小宮山ゼミに入れなかった恨みから争議を起こします。
それぞれ事情は異なるのに、おっぱいマンションに振り回されているんです。過去も現在も。
自分の作品が今でも注目を集めているのは、小宮山悟郎氏にとっては嬉しいかもしれませんね。かなり自己中心的な人のようですから。
おっぱいマンションのモデル
この本の表紙を見て思い出したのが「中銀カプセルタワービル」です。建築家・黒川紀章氏が設計したビルで、おそらく「おっぱいマンション」のモデルでしょう。
作中でもおっぱいマンションはメタボリズムを提唱していると書いてありましたし。
こちらの建物は保存・再生が計画されるものの、2022年に解体されました。現在、カプセル部分は分解され、再利用されているそうです。

文庫版
この『おっぱいマンション改修争議』、文庫版ではタイトルが違うんですね。これだとまったく違う内容に思えます。
こうしてみると、単行本はインパクト重視、文庫版は多くの人が関心を持つ内容にシフトしていくのがわかります。出版社の苦労が伺えます。