ビストロ・パ・マルシリーズ4『間の悪いスフレ』では、コロナ禍でのフレンチレストランの苦悩や若い人へのエールが印象的でした。
『間の悪いスフレ』あらすじ
小さなフレンチレストラン、ビストロ・パ・マル。ここでは客たちの悩みや謎を、シェフが料理で解決していきます。
「クスクスのきた道」…オペラ歌手を目指す少女はフランス料理を嫌っていた
「未来のプラトー・ド・フロマージュ」…コロナ禍のテイクアウトデリを買っていく少年
「知らないタジン」…コロナ禍で開いた料理教室で難癖をつける男性
「幻想のフリカッセ」…ある日突然、料理が下手になった母親の謎
「間の悪いスフレ」…サプライズのプロポーズが間の悪いことに…
「モンドールの理由」…国産食材のメニューに一つだけフランス産のチーズがある理由
「ベラベッカという名前」…スタッフがすぐ辞めてしまう他店ビストロの謎
コロナ禍のフランス料理
2020年から始まったコロナ禍では飲食業界が大打撃を受けました。
ビストロ・パ・マルでも時間短縮、テイクアウト提供、料理教室など、あの手この手で営業を続けていきます。このあたりの描写は、当時のことを思い出して胸が痛みました。
追い打ちをかけるようにウクライナ侵攻による材料不足、運輸費の高騰など、フランス料理には逆風が吹き荒れていました。
それでも三舟シェフをはじめとしたビストロ・パ・マルのメンバーはへこたれません。工夫をこらして料理を提供してくれます。
若い人へのエールと手厳しい苦言
今回、「間の悪いスフレ」では、若い人へのエールが込められている話が印象的でした。
- 白人ばかりの世界でオペラ歌手を目指す少女には、フランスの国民食、クスクスの由来を
- 北海道へ引っ越す料理人志望の中学生には、国産チーズの美味しさを伝える
- コロナ禍や紛争でフランス修行ができない若いシェフには。彼にはフランス産チーズ、モンドールの理由を
この情勢不安な世界で、これから生きる若者たちへの三舟シェフなりのエールが伝わります。
反対に、世の中を恨み、手近な人間を攻撃する人間(「知らないタジン」)には、手厳しく辛辣にやり込めます。
世の中の責任を放棄し、思うようにいかない苛立ちを弱い立場の人にぶつけるような人にはなりたくないものです。