『春琴抄』は、美しくわがままな盲目の琴の師匠春琴と、彼女をマゾヒスティックに支える弟子・佐助の物語。
作者が佐助の遺した「春琴伝」をもとに書き起こす、という文章形態になっています。
『春琴抄』あらすじ
大阪の富商の家に産まれた琴女は、幼少の頃に失明し、琴の稽古に佐助という丁稚に手を引かせていた。やがて二人は主家と使用人から師匠と弟子の関係となる。
美しいが、わがままで維持の悪い春琴に盲目的に尽くす佐助。やがて二人の間には子もできるが、お互いに色恋があるなどどはまったく認めない。
春琴が家から独立すると、当然のごとく佐助も共住し、春琴の身の回りの世話を一手に引き受けていた。わがままな春琴は敵も多く、ある時、暴漢により顔に怪我を負ってしまい…。
献身とマゾヒズム
谷崎と言えばマゾヒズム。『刺青』や『痴人の愛』など、そこには男が女に振り回され、折檻されることで快楽を得る。
そこにあるのは匂い立つようなエロスと、純愛。
『春琴抄』でも、佐助は春琴の食事や身支度、果ては風呂や手水場(トイレ)に至るまで世話をやきます。それも、少しでも加減が悪いと春琴の起源を損ねてしまう。
冷え性の春琴の足を佐助が胸で温める場面は、エロティシズムが漂う描写です。手でも足でもなく、胸で温めるって…!
映画版『春琴抄』
『春琴抄』は何度も映画化されていますが、山口百恵と三浦友和の『春琴抄』は往年の映画人たちが制作に携わっているので、とても美しい。
そして、究極のマゾヒズムであり、グロテスクでもある佐助の失明。春琴が暴漢襲われて顔にひどい火傷を負った時、顔を見られたくないという師匠の願いに自ら目を針で…。
こんなグロテスクなシーンなのに、佐助自身は恍惚とも言うべき感情を抱いているんですよ。
その思いはもはや献身ではなく、信仰のごとく進化していきます。
谷崎作品を読むならAudibleがおすすめ
今回、久しぶりにAudibleで『春琴抄』を聞いて、読んでみたら、めちゃめちゃわかりやすい…!
谷崎潤一郎の文体って、改行が無いし、今では読みづらい言い回しが多く、ストーリーはわかっても、描写が分かりづらい。
それが、抑揚のついた朗読だと、情景の描写が頭に自然と浮かぶんです。
そうして読み返してみると、春琴の美貌や体つき、盲人の所作など、こと細かく描写されていることに気が付きました。(対して、佐助の描写が少ないことも)
過去の文豪物語をより深く味わえるAudible。これから過去の文豪作品を読むのが楽しみになりました。
