飛鳥井千砂さんの『タイニー・タイニー・ハッピー』は、読むとほっこりとした気持ちになる、やさしい恋愛オムニバス小説です。
とても等身大な話なので、感想も友達に話すような感じになってしまいました。
『タイニー・タイニー・ハッピー』あらすじ
大型ショッピングセンター「タイニー・タイニー・ハッピー(通称タイハピ)」で働く人々。
気持ちがすれ違ってしまう夫婦、既婚者の同僚に片思いしつつも、つきあっている彼女のことも嫌いになれないメガネ店の店員。
彼氏がいるのに流されて一度だけ浮気をしてしまうウエイトレス、片思いの女性の態度に振り回されるタイハピ社員…。
彼らのリアルな日常や恋愛はやさしくて、愛おしくて温かい。そんな気持ちになります。(中には嫌な人物もいますけれど)
空気を読まない女子と小悪魔女子
「タイニー・タイニー・ハッピー」は、やさしいだけの物語じゃなく「トゲ」を含んだキャラクターが登場します。それがKY女子の小山さんと、小悪魔女子・若菜。
この個性的な2人が登場人物たちの間に波乱を起こします。
空気を読まない小山さん
小山理恵さんは、この人だけはイライラさせられました。
自分に好意をもっている川野さんに対してひどい態度をとっても、それが「なぜ悪いのか」がわからないんです。
ハキハキしてしっかりものだけど、自分の思ったことをすぐ口にして空気を読まない。
小山さんは、遠距離恋愛の彼氏と連絡がつかなくなります。しかしはっきりしないことが嫌いな彼女は、電話で彼を問い詰めてしまいます。
そこで彼氏から「正直だけど残酷な答え」を聞かされ、自分の発言が人を傷つけるということを知る。…ていうか、今までの人生で気づけよ、って思いましたよ。
小悪魔女子の若菜
小悪魔女子・若菜は同棲中の彼女のいるショップ店長・カズを堂々と誘惑する。上目遣い、計算されたかわいい笑顔という定番テクを駆使して迫るものの、カズの方は揺らぎつつも動じない。
若菜ちゃんは憎たらしい女子ですが、彼女の側からの視点も語られています。彼女にも苦労がないわけじゃない。
当然女子から嫌われて孤独だし、武器である「可愛さ」は年とともに目減りしてしまう。でも、動じない強さを持つ若菜ちゃんは、ちょっと尊敬するな。友達にはなりたくないけど。
共感する恋愛エピソード
「タイニー・タイニー・ハッピー」は登場人物たちが私達の身近にいそうな人たちです。なので、恋愛や人間関係について、思わず共感しちゃうエピソードもがたくさん。
川野くんと森崎くんは片思いの相手のことを一面からしか理解してない。これ、男性によくある現象ですね。自分に都合の悪いところは見ないの。
森崎くんの彼女・笑子ちゃんが、そっけない森崎くんからのメールを一生懸命待って受信メールの問い合わせをしちゃうところ、けなげで可愛かったなあ。
こっちが思えば思うほど、返事ってこないんだよね。
読みながら「あー、これわかるなあ」と思う部分がたくさんありました。
飛鳥井千砂さんの小説
飛鳥井千砂さんはこちらの『私たちの特別な一日: 冠婚葬祭アンソロジー』にも寄稿しています。日常を描くのがうまい作家さんは冠婚葬祭の物語も味わい深い。