『悪魔の辞典』アンブローズ・ビアス

辞典のイメージ 言葉の本

アンブローズ・ビアスの『悪魔の辞典』は、タイトルに『悪魔』と付くくらいですので、その内容は辛辣。風刺に皮肉に誹謗中傷。それらをユーモアあふれる言葉で綴った辞書です。

著:ビアス, 著:西川 正身
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最初に『悪魔の辞典』を読んだのは中学生の頃でした。当時は難しい言い回しや、聖書関連の内容がわからず、読むのに四苦八苦した覚えがあります。

しかし、それでも万国共通で理解できる内容もあり、その辛辣さとユーモアが大好きでした。

今読んでも当時の風俗や流行、そして聖書ベースの部分は読解が難しいのですが、昔よりも理解ができるようになりました。

また、昔から変わらないもの、権力や恋愛、結婚、に関する記述は今読んでもニヤリとしてしまいます。

悪魔の辞典の語釈

「語釈」とは辞書に掲載される言葉の意味を綴ったもの。

『舟を編む』で一部の読書好きに有名になりました。しかし、悪魔の辞典の語釈は皮肉と風刺に溢れています。

貴族

(中略)野心を持つアメリカの金持ちの娘たちのために、自然が用意してくれているもの

イギリスドラマ『ダウントン・アビー』でも、グランサム伯爵夫人はアメリカの大富豪の娘でしたから、あながち間違ってはいないのでしょう。

銀行預金

銀行を支えていくために行われる慈善の寄付

これは今でも変わりませんね。

更に昨今は窓口にいくと投資まで勧められるので、下手をすると資産を減らすどころか、本当に慈善の寄付になりかねないので注意が必要です。

恋愛

一時的な精神異常だが、結婚するか、原因から遠ざかれば簡単に直る

だからといって、結婚をすればいいかというと、もちろんそんな風には書いてありません。

結婚

「(中略)一人の主人と一人の主婦と、二人の奴隷とからなり、それでいて全部合わせて二人にしかならない状態」

なんのこっちゃかわからない文ですが、それだけ複雑ということなのかもしれません。

誕生

「あらゆる災難の中で、最初に訪れる、最も恐ろしい災難」

これはもう…。ビアスの辛辣さ全開ですね。ただ、ビアスは息子を亡くしているので、その悲しみを災難と例えたたのかも。

いやでも、そんなきれいごとではないか…。

アンブローズ・ビアスという人

アンブローズ・ビアスという人は、「ニガヨモギと酸をインキがわりに用いた」と言われていました。ニガヨモギはハリー・ポッターにも登場するハーブ。

苦味があることで知られています。それくらい、辛辣だということでしょうね。

この人の人生は、彼の著作以上に波乱万丈で、家族との不和、家出、戦争体験、離婚…。最終的には「失踪」で消息を断っています。

作家の中には早世したり、自殺したりする人も多いですが、「失踪後、行方不明」というインパクトの強さは、最初に読んだ子供の頃から今でも忘れられません。

ちなみに『悪魔の辞典』の『失踪』の項目には

「不可解に行動すること、他人の財産を持ち逃げするときに使う」

と記述されていました。

『悪魔の辞典』派生作品

調べてみると、悪魔の辞典の派生作品は今でも出版されているらしく、筒井康隆さんの翻訳本や池上彰さんの政界バージョンまで、さまざまなものがあるようです。

ビアスはジャーナリストでもあったので、池上さんのジャーナリスト視点の「悪魔の辞典」は面白そうですね。

KADOKAWA
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