『後宮の烏3』から、この世界の地図と、烏妃たちの住む霄国の地図、登場人物の表記がつきました。
アニメ主題歌で女王蜂のアヴちゃんが「四角い海」と歌うように、この世界は平坦で、その両端に神々が住む島があります。
地名もまた独特で、別の国の発音を漢字に当てはめたような記述があります。この世界の不思議な魅力が伝わってくる地図です。
『後宮の烏3』あらすじ
女神・烏漣娘娘の兄である「梟」の襲撃からしばらくたち、烏妃である寿雪は自らの存在について思い悩む。
しかし、それでも今夜もまた、彼女のもとには幽鬼に悩む人々が訪れる。
泊鶴宮の宮女・泉女の呪いを解いたことがきっかけとなり、寿雪は新興宗教「八真教」を知る。「八真教」は「亀の王」といわれる鼈(ごう)の神を祀っていて、それが烏漣娘娘の衰退につながっているらしい。
一方、皇帝である高峻は地方で勢力を伸ばす「八真教」という新興宗教を調べていた。どうやら泉女の仕える鶴妃の実家が庇護していることを掴む。
ひとつひとつの事件が、やがて大きな流れとなって寿雪と高峻を巻き込もうとする…。
描写の美しさ
物語の展開とは別に楽しみなのが、寿雪たちの日常の描写です。妃たちが着る美しい衣装の描写や、かんざしが揺れる音、寿雪が術で使う牡丹の描写などが、繊細で美しく表現されています。
そして、時おり高峻が持ってくるお菓子がとても美味しそう。
蓮の実が入った饅頭や杏を飴で固めたもの、桃の蜜煮…。殺伐とした話のなかで、少し気が解ける瞬間です。『後宮の烏レシピ集』を出してほしい。
伏線だらけの展開(ネタバレあり)
今回、任務で花街を訪れた宦官の衛青は、寿雪との意外な因縁が明らかになります。
これは驚きました。ふたりはどうやら異母兄弟であるらしいのです。高峻の「お前たちは仲良くなれそう」というセリフがここで回収されるとは…。
寿雪には、烏妃であることと、前王朝の生き残りという、2つの因縁を持ちます。そして、今回あらたに古代王朝とも関連があることが匂わされています。
鶴妃の実家の暗躍、鼈(ごう)の神と烏漣娘娘の関係、八神教の教祖・白雷の思惑、寿雪と高峻の関係の変化など、伏線だらけの3巻でした。
そして、物語の冒頭、宦官の少年・衣斯哈(いしは)の視点で物語が始まり、幼なじみの女の子を心配する独白、ラストで女の子側の視点で描かれます。
お互いの所在を知らぬまま、敵と味方に別れてしまった少年と少女は、どうなってしまうんでしょうか。