『あやし うらめし あな かなし』浅田次郎

ミステリ・ホラー

タイトルに「うらめし」とあるので怖い話かと思いきや、悲しくて切なく、ロマンティシズムに溢れた作品でした。

集英社
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切なく多彩な怪談集

『あやし うらめし あな かなし』には、様々な幽霊が出てきます。

心中の末、苦しんで死んだ女郎の苦しみ(『赤い絆』)

戦争で亡くなった兵士が兵舎をさまよう霊(『遠別離』)など。

亡くなっても、生前の苦しみを残す幽霊は「うらめし」よりも「かなし」を感じました。

御岳山の不思議な噺

私が印象に残ったのが、御岳山の宿坊の噺です。浅田次郎さんの母方は青梅御嶽神社の神主の家系で、家は宿坊を営んでいたそうです。

そんなお家に伝わる不思議な話を元に書かれたのが『赤い絆』と『お狐様の話』。語り部である伯母が少女時代に体験した話を子どもたちに語る形式で書かれています。

特に『お狐様の話』では狐憑きを祓うシーンがでてきます。こうした「あやし」を祓うために、神を降ろす方法とその理由が詳細に書かれています。

怪異に対する防御システムを人は長い時間をかけて構築してきたのだなと、この文を読んで感じました。

解説でもこの小説は「民俗学的」と称されていました。まさにそうした口伝の歴史を感じさせる怪談です。

著:浅田次郎
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