推し活と社会問題をテーマにした『イン・ザ・メガ・チャーチ』。読み進めるほどに深く、面白くなっていく。本屋大賞2026大賞にふわさしい物語です。
そして、推し活をしている身としては、推し活が少し怖くなり、物語を信じられなくなりました。まったく、なんて物を書いてくれたんだ、朝井リョウ…。
推し活と宗教
『イン・ザ・メガ・チャーチ』では、推し活に沼る人、沼らせる側の人、そして推し活で人生を狂わす人、三人の立場から描かれていきます。
推し活は孤独者の宗教である
『孤独とつながりの消費論』三浦展
この本でもまさに、孤独を感じる人々に「物語」を与え、視野を狭めて、コントロールしてゆく様子が宗教団体の洗脳のように描かれます。
私も男性アイドルやアーティストを推す身です。だから少し、推し活が怖くなってしまいました。
孤独と推し活
私は、登場人物の中でもっとも「信徒ファン」に近いのは久保田だと思うんです。彼は孤独ゆえに視野を狭め、娘を自分の理想像に当てはめています。
実は、娘は自分の仕掛けたアイドルのファン獲得戦略のため、推し活にめり込んでいるのですが。そんなことは知らず、能天気に「自分の娘は他とは違う」を信じ込んでいる。
あるいは、自分を気にかけている人に対し、孤独を解消してくれる対象として偏った愛情をそそいでしまう。
孤独と推し活は相性がいい。『孤独とつながりの消費論』を読むと、『イン・ザ・メガチャーチ』の世界が統計的にも証明されていることがわかります。
I am available to You
推し活の仕掛ける側の人間・国見はこう言います。
我々は搾取するのではない。彼らに自分自身を使い切らせてやっているのだ。
「みんな、自分を余らせたくないんです」
これを聞いてゴスペル(黒人霊歌)の『Lord,I’m Available To You 』を思い出しました。神への感謝と奉仕を歌った名曲ですが、こんな歌詞があります。
My storage is empty and I am available to You
私は空っぽです。だから神様。あなたのために私を使ってください。
まさに、もう、推し活こそが、視野を狭めてメガチャーチへ導くのが現代の、そして日本の新たな宗教なのでしょう。
最終的に『イン・ザ・メガ・チャーチ』を読んだ、私の感じたのはこれです。
自分自身が幸せなら、推し活でも陰謀論でも、なんでもしたらいい。
岡村靖幸もそう歌ってるよ。
