『ビブリア古書堂の事件手帖II~扉子と空白の時~』は、横溝正史の幻の書籍『雪割草』をモチーフに横溝小説のような家族の葛藤がテーマのミステリ。
今回は成長した扉子ちゃんが活躍します。
『ビブリア古書堂の事件手帖II~扉子と空白の時~』あらすじ
前作では小学生だった栞子さん娘・扉子ちゃんが高校生になっており、そこから物語は過去へさかのぼっていき…。
扉子は祖母・篠川智恵子から父・大輔が書いたマイブックと持ってくるよう言われる。
友人家族が営むブックカフェで祖母を待つ間、マイブックを読みふける扉子。
そこには過去、ビブリア古書堂が遭遇した本にまつわる『ビブリア古書堂の事件手帖』が書かれていた…。
事実と虚構の二重構造
この物語は、横溝正史の『雪割草』にまつわる時間の二重構造が興味深い筋立てでした。
また、新聞小説を切り抜いて作る「自装本」というジャンルがあるのも初めて知りました。
当時は新聞小説がすべて単行本になるわけではなく、自分で本や新聞の切り抜きを装丁する文化があったようですね。
そういえば、江戸川乱歩も、新聞の切り抜きなどをスクラップにして装丁した『貼雑年譜』を作っていましたっけ。
『第一章 雪割草I』
上島家の当主・上島秋世が亡くなった。葬儀の歳、彼女が甥に譲るはずの『雪割草』の自装本が紛失してしまう。
本の捜索を依頼された栞子さんと大輔は、横溝小説のようなそっくりな双子の老女に振り回されてしまう。
第一章では、2017年に発見される以前の時間を舞台に、世に存在しない『雪割草』を自装本として登場させ、そこに横溝正史の自筆原稿を絡めたミステリになっています。
『第三章 雪割草II』
『雪割草』の原稿が発見され、再販後の2021年。9年前に解決できず、依頼人の家族にも深い溝ができたことを後悔していた栞子さんが、ふたたび上島家から依頼をうけることに。
『ビブリア古書堂の事件手帖4~栞子さんと二つの顔~』でも、乱歩の架空の小説が出てきます。
ここではそのアイデアをさらに発展させ、未来の事実から架空の過去が描かれていくところが興味深かったです。
横溝正史の原稿を書くときの習慣など、史実や真実を交えつつ架空のミステリ要素を配置しているんですが、それが見事で。
本当に『雪割草』の自筆原稿があるんじゃないかと思えるんですよ。
扉子というキャラクター
子どもが親から引き継いだ能力を、パワーアップさせていくのがネクストジェネレーションものの定番です。
そして、扉子ちゃんは今後、篠川家で最強になるのかもしれません。
- 智恵子さん…推理は本のため。それ以外には使わないし、手段も厭わない
- 栞子さん…推理は人のため。しかし、自分の能力(や美貌)への無自覚さが事件のきっかけに。
そして、扉子ちゃんです。彼女も卓越した記憶力と推理力の片鱗をみせています。しかし、祖母、母と違うのは人とコミュニケーションがきちんと取れるところだと思います。
その証拠に『獄門島』をモチーフにした話では、きちんと対等な友だちをつくっています。
栞子さんは、夫の大輔くんをはじめ、周囲の人は彼女の「保護者」のようなものですから。
智恵子さんに関しては、友だちと呼べる人がいるのか…謎です。
そして、扉子ちゃんは父親が書いた「事件手帖」の内容だけで、両親でも時間がかかった謎を解いてしまいます。
母の推理力、父の洞察力を受け継いだ扉子ちゃん。彼女には、これからどんな本の謎が待っているんでしょうか…
今後の展開
以前、作者の三上延さんは「ビブリアの後日譚と前日譚を書くつもり」とコメントしていました。
シリーズ後半、栞子さんの祖父でありビブリア古書堂の創始者のエピソードが書かれていたので、私は戦前、戦後の古書の話が始まるのかとワクワクしていたのです。(そのため、難しい専門書も読んだ)
しかし、扉子ちゃんという最強のキャラクターが現われたので、これから『ビブリア古書堂の事件手帖II』として彼女の推理を生かしたラノベ風味の学園推理モノとかになるのかな…。
そりゃ、おじいさんの話より、美少女の方が受けがいいよな…とがっかりしていたら、これから前日譚も書かれるとあとがきにありました。うれしい…。
そりゃ、理由が無ければ「あの」智恵子さんが、わざわざ孫に会いに来るわけがないもんな…今後の展開が楽しみです。
