『フェルマーの最終定理』は、証明不可能といわれた数式、フェルマーの最終定理にまつわる数学者のドキュメンタリー。
数学は難しい、でも数学者たちは面白い。
難しい数式も出てきますが、むしろ数学者の性格や人生、数学の歴史を中心に書かれているので、数学がわからなくとも楽しめます。
数学の歴史とフェルマーの最終定理
数学の歴史は古く、遠く古代ギリシャのピタゴラスの時代から始まり、ギリシャからや中東やインドに伝わり(そこで0が発見される)さらにヨーロッパへ伝わります。
そして17世紀、弁護士として働くアマチュアの数学家ピエール・ド・フェルマーは仕事の合間に、いくつもの定理を発見します。
ところがこのフェルマーという人、かなり「いけず」でして、自らの定理の証明をわざと書き残さなかったんです。
そのせいで300年以上も、学者たちがこの難問に頭を悩ましていくことになりました。
難しい本はちょっと…という方にはこちらもおすすめ。理系学生のリアル(?)を描いた『決してマネしないでください』という漫画にフェルマーの最終定理のざっくりとした紹介が載っています。
カール・セーガン博士とフェルマーの最終定理
70年代に人気を誇ったテレビの宇宙番組「コスモス」の司会者であり、天体物理学者のカール・セーガン博士。
彼は宇宙人と交信できるという人達から、よくこう聞かれました。
「宇宙人と話ができますよ。何が聞きたいですか?」
そういう時、博士はきまって「フェルマーの最終定理の証明」と答えたそうです。
フェルマーの最終定理がどれだけ難解であったかが伝わるエピソードですね。ちなみに答えが返ってきたことはないそうです。
数学にとりつかれた人々
この、フェルマーの最終定理に関わる人たちの生き様が面白いんです。
最終定理は長い年月の間、すこしずつ部分的に証明が立証されていきます。さらには「フェルマーの定理が証明できないという証明」が証明され、またその証明が否定される…。
と、どんどん袋小路に陥っていきます。
この本では、この最終定理に関わった多くの数学者の業績とその人生が紹介されています。
失恋が原因で自殺を考えたけれど、最終定理に関わる数式を説いている内に夜が明けてしまい、結局自殺のタイミングを失ってしまった人。
当時珍しかった女性の数学者、有名なドイツの暗号機「エニグマ」の解読に関わったアラン・チューリングなど、個性あふれる数学者が登場します。
数学者の生涯は、芸術家に似ている
情熱的で破天荒で、己の目指すところへひたすらに突き進む。
その作業は人類の役に立つわけではなく、ただ「好きなことを追いかける」その姿は、学者というより芸術家に近い気がします。
作中に紹介された十数人、数学者のうち二人も恋愛絡みの自殺(一人は自殺未遂)を試みていたり、中には決闘で命を落とす人までいました。
数学にまつわる冒険
日本人の数学者たちもフェルマーの最終定理を解くための予想を提案していました。
「谷山=志村予想を証明することができた時、フェルマーの最終定理を証明することができる」というところまでたどり着きます。
しかし、それでもフェルマーの最終定理は難攻不落で数学者たちを寄せ付けませんでした。
ひとりの数学者・アンドリュー・ワイルズが解き明かすまでは。
ワイルズのフェルマーの最終定理の解き方はユニークで、彼は過去300年に渡る「失敗の歴史」を検証し、なぜ失敗したのかを検証することで、最終定理に至るアイデアを抽出していきました。
彼は子供の頃、数学の本の中にフェルマーの最終定理を見つけてから、この最も難解なパズルを解く冒険の旅を始めたのです。
途中、致命的なエラーを発見するものの、リカバリーの方策を見つけ出し、ここにフェルマーの最終定理はその謎を白日のもとにさらすことになりました。
それは、偉大な冒険の終わりと、数学者の頭のみで証明する数学の終わりでもあったのです。
作者は最後にコンピュータの台頭により、巨大な数の計算が可能になったことで、これほど楽しいパズルはなくなるのではないかと書いています。
永遠の謎が解けてしまうことは、いいことばかりではないようです。
それでもまた、数学者たちはまだ解かれていないパズルに挑んでいくのでしょうね。

