『万葉と沙羅』中江有里

古書店 小説感想

いい本に出会いました。

中江有里さんの『万葉と沙羅』。本を通じて少しずつ成長する高校生たちが、とてもまぶしく、愛おしいと感じました。

著:中江有里
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『万葉と沙羅』あらすじ

中学時代、いじめを受けて不登校になった沙羅は入学した単位制高校で幼なじみの万葉と再会する。

万葉のすすめで本を読むようになった沙羅は、本を通じて少しずつ学校になじめるようになってきた。

万葉は大学へ進学し、叔父の古書店を手伝っているものの、自分の将来について悩み始める。一方、沙羅もまた、なかなか成長できない自分を持て余していき…。

純粋な言葉で綴られた青春小説

中江さんの文章からは、万葉くんと沙羅ちゃんのみずみずしい感性が伝わってきます。特に、沙羅ちゃんが本に向き合った時の感動や、新しい発見を表す言葉がすてき。

万葉くんが読了後もずっと、その本のことを考えていると聞いた時、

そっか…読み終わっても、読書はずっと続いてるんだね

友達から万葉くんへの感情を聞かれた時

『好き』の種類っていくつあるんだろうね (中略) 『好き』だって、もっと細かい言葉があればいいのに

おばあちゃんの本棚を見せてもらった時

人の本棚って面白いね。頭の中身を覗いているみたい

大人になると当たり前と思えるようなことも、それらに初めて出会った沙羅ちゃんを通してみると、読者の私もまた、新鮮な感動を体験することができたんです。

本はすごいですね。読むと若者から年寄りまで、様々な感情を体感することができるのですから。

将来への不安

将来への不安と悩み。どこへ進んだらいいかわからない不安。『万葉と沙羅』では、そうしたティーンエイジたちの心の機微が丁寧に描かれています。

おもわず私も(中年なのに)沙羅の将来への不安にリンクしてモヤモヤしたり、親目線でハラハラしたり。

若い頃って経験値が少ないから、まるで地図なし、装備なしでゲーム世界を歩くようなものです。
大人になると、壁にぶち当たったり、恥ずかしい思いを経験して自分の地図ができると、人生も少し歩きやすくなるのですが。

10代はとにかく、手探りで歩いていくしかありません。

でもきっと、二人なら大丈夫でしょう。彼らを心配する周りの大人たちも、人生のあちこちで壁にぶつかっていますし、読んできた本も味方してくれますから。

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