『考察する若者たち』では、正解を求めて考察をし、界隈というコミュニティに属し、報われるなら努力を惜しまない。
そんな現代の若者たちの在り方を、人気コンテンツと独自の言葉で解説してくれています。
考察と批評の違い
今回、『考察する若者たち』で「考察」と「批評」の違いを初めて知りました。
- 考察…作り手が用意した正解を推理すること
- 批評…正解のない推理を探求すること
私は江戸川乱歩の『陰獣』を始めて読んだ時、正解のない結末にモヤモヤしたことがあります。
令和世代は、そんな答えのない推測よりも、努力が報われる考察を好むのだそうです。
じゃあ、彼らは『陰獣』を読んでモヤモヤしたり、推測したりしないのかな。正解のない推理も結構楽しいものだけれど。
異世界転生について
私が今まで見てきた「異世界転生」は、チート能力で一人勝ち、そして全種族の美女に愛されるハーレムものばかり。
そんなご都合主義の展開に、「若い世代は、そんなにも楽をしたいのか…。」と、思っていました。
しかし、この本によると、彼らは「努力をしたくないんじゃない、努力が報われる環境が欲しいだけ。」なんだそうです。
環境のガチャに外れると、いくら努力しても報われないから。だから環境を変えたいと思うのは若者だけではないのかも。
「報われ」と真逆なもの
私は、「報われたい」の真逆に位置するのは「知識欲」ではないかと思うのです。
野呂邦暢のエッセイ『蔵書印』では、作者の伯父がたった一行の出典のためだけに、時間と労力を惜しまずに調べ尽くすエピソードが出てきます。
彼もまた、正解を追い求めてはいますが、「コスパ」や「タイパ」は度外視。「ただ知りたいから」のために、報われない努力を惜しまないんです。
戦後の「どうしても知りたい」という情熱と、令和の「どうしても報われたい」感情。真逆でありながら、どこか共通する部分があるのも興味深いです。
「界隈」と『スキップとローファー』
この本では、昨今のコンテンツから世相を批評しており、そこに私の愛読書『スキップとローファー』が頻繁に登場します。
若者の間でよく使われる「界隈」。『スキップとローファー』界隈の壁を、主人公のみつみちゃんが無意識にぶっ壊して、つながってゆく物語であるから面白いのだと。
なるほど~!そんな風に読んだことがなかったから新鮮でした!
確かにこの漫画は同じ属性のコミュニティである「界隈」や自らをキャラ化して集団生活をやり過ごす登場人物たちの様子が描かれています。
三宅香帆さんは、こうした言葉にならなかった現象を、的確に言葉にして表現してくれる方だと改めて実感しました。

