活版印刷三日月堂シリーズ外伝『小さな折り紙』。前作『空色の冊子』が弓子さんの三日月堂以前の話なら、こちらは三日月堂の後日譚。
その後の弓子さんも登場します。
特に気になったお話がこちら。
南十字星の下で
『星たちの栞』に登場した女子高生・侑加と小枝の話。
文化祭で活版印刷の栞を作ってから数ヶ月。侑加はオーストラリアへ行くため、最後の時間を慈しむように文芸部の文集づくりに励みます。
この文庫には最初に活版印刷された1ページ分差し込まれているのですが、それがこの場面。侑加が言葉と文字について語っています。
言葉があるから残っている。人々に読まれ続けてきたから残ってる。 星になって、人々の心の空の中で光ってる。
本の中には他にも、言葉や文字、声についてさまざまな表現で描かれます。
普段何気なく使っている文字や声ですが、こんなにも深い味わいものなのか、と改めて感じました。
庭の昼食
三日月堂のアルバイト・楓さんとその母・久仁子さんのお話。
久仁子さんは弓子さんの母・カナコさんと同じゼミ生でした。
カナコさんの残した短歌を三日月堂で出版するため、恩師や同級生と一緒に句集のアイデアを出し合います。
若くして亡くなったカナコさんの短歌は、幼かった弓子さんに向けて綴った愛情あふれる句でした。
ここは何度読んでも泣いてしまいます。
そして恩師・深沢先生の言葉がカナコさんの句の本質を表しています。
ほんとうに言葉って不思議よね。種のように長い間眠っていても、人の心に落ちればまた芽を出す。
水の中の雲
私が個人的に気になっていた、デザイナーの金子さんと、朗読サークルの小穂さんの恋。
「金子さんは小穂さんの声から好きになったのでは」と思っていたら案の定(笑)。朗読会で号泣したそうです。
この章では、文字の他に「声」が言葉を伝えます。最初は自信のなかった小穂さんですが、その独特の声のゆらぎは、人の心に言葉をを届けます。
声ってふしぎだなあ。色があって質感があって奥行きがある。
小さな折り紙
川越のあけぼの保育園の園長先生視点。
佑くんの家は活版印刷屋さんで、お母さんの弓子さんもまた、このあけぼの保育園に通っていました。
保育園時代の弓子さんを思い出す園長先生は、小さかった弓子ちゃんが折り紙を見て泣いてしまったことを思い出します。
それは、若くして亡くなったお母さんが贈ってくれた折り紙のメッセージを思い出したから。
カナコさん、弓子さんを残して逝くのは心配だったでしょうね。
でも折り紙の手紙や「なくならないよ」と歌われた短歌で、弓子さんが寂しくないように、たくさんの言葉を残してくれていました。
それが大人になった弓子さんを支えているんですね。
弓子さんが今はお母さん…よかった…。
幸せな「今」がしれて読者は嬉しいです。前作に金子さんが式に出て泣いちゃった話がでてきますが、もう、読者もほんとそんな感じですよ…。
これからも三日月堂は人の思いを汲んで、文字を組んでいくのでしょう。
弓子さん、どうかお元気で。
