『活版印刷三日月堂 空色の冊子』は、活版印刷三日月堂シリーズの外伝的な短編集。弓子さんが生まれる前から川越に戻るまでの前日譚です。
三日月堂のお客さんや弓子さんの両親や祖父母、本編では登場しない人たちが何を思い、どう生きていたかが描かれています。
ヒーローたちの記念写真
『活版印刷三日月堂 海からの手紙』に収録の『我らの西部劇』に登場した西部劇映画同人誌「ウエスタン」をめぐる物語。
本編の登場人物・ハルさんや三日月堂店主で弓子さんの祖父も登場、「ウエスタン」発行に力を貸します。
ほしおさなえさんによると、お父様も西部劇ファンで切り抜きを集めていたのだとか。
昭和20~30年代は娯楽が少なく、その中でも西部劇は手軽に見れるエンタメだったそうです。
星と暗闇
弓子さんのご両親のなれそめから結婚、そして別れまでのお話。
最愛の奥さんを亡くし、途方に暮れていた心に響いたのは、かつて妻が残した短歌と、満天の星空でした。
届かない手紙
弓子さんが小学生のときのお話。弓子さんの祖母の視点で描かれます。
小さい頃、川越の祖父母のもとでで育てられた弓子さん。小学校の時お父さんと暮らすことになります。
三日月堂を去る前、弓子ちゃんはおばあちゃんと名前入りのレターセットを作るのですが、そのとき自分の名前の由来を知ります。
「弓子という名前は、思いを遠くまで届けられる人」という意味が込められていました。
小さい頃にこんな楽しい体験をしたら、思い出としてずっと残るでしょうね。
『届かない手紙』は『大人の科学マガジン小さな活版印刷機』に収録されていた短編。組み立て式の活版印刷機は活字やインキもついていて、ちゃんと印刷もできるのです。
※再販版には掲載されていません。
ひこうき雲
『活版印刷三日月堂 庭のアルバム』に登場した、弓子さんの母の友人・裕美さんのお話。
歌手志望の裕美さんでしたが、両親の反対で結局見合い結婚。家庭の問題でカナコさんの最後に向き合えなかった後悔を抱えていました。
時を経て、成長した娘とカナコさんのお墓参りに行った裕美さん。
カナコさんの前で歌うことで、一歩進む勇気を得ることができました。
昭和は「女は結婚、夫に従う」という概念があった時代。相当の自立心や才能がないと夢に向かうことが難しい時代でした。
カナコさんも家庭問題で苦労をしていますし、まだまだ女性の生き辛い時代を感じさせられます。
最後のカレンダー
川越の老舗紙店の店主が、三日月堂にカレンダーを頼みに来るが、三日月堂は廃業を考えていた。最後のカレンダーとして埼玉県小川町の細川紙を持ってきた。
活版印刷も和紙も、現代の私たちから見ると古い技術のようですが、実は印刷に和紙というのは実は新鮮な組み合わせなんですね。
古い技術を残すために携わる人達が創意工夫をしてきたからこそ残っていくのかもしれません。
空色の冊子
三日月堂店主・弓子さんのおじいさん視点。
弓子さんも登場します。東日本大震災当時、日本中が騒然となっていた頃。
弓子さんの通っていた保育園の園長から「震災の影響で卒園記念冊子が作れない」と聞き、三日月堂の最後の仕事として引き受けることに。
弓子さんも通った保育園のためならと、手伝いに来てくれます。
自分の好きな活版印刷を貫き通したお祖父様の姿が、後の弓子さんにも影響をあたえたのかもしれません。
引っ越しの日
弓子さんの学生時代の友人・唯は舞台役者。
所属劇団の主宰が姿を消したのをきっかけに故郷に帰っていたが、久しぶりに仲間の舞台を見に横浜へ。そこで偶然弓子さんと再会。
弓子さんは父親を亡くし、昔住んでいた川越に引っ越すという。
唯は、なりゆきで引っ越し作業を手伝いながら弓子さんとな話をします。
学園祭のこと、弓子さんの事情、そして自分のこれからのこと…。古い友人との会話は、時々いろいろなことを自分に教えてくれます。
ふたりとも話すことで自分の今に区切りをつけて、新しく進んでいこうとします。
そしてここから、『活版印刷三日月堂』が始まるのです。
