『菓子屋横丁月光荘 丸窓』の中に登場した『赤いろうそくと人魚』が懐かしくて、久しぶりに『小川未明童話集』を読み返しました。
子供の頃は恐ろしくて不思議な印象のあった小川未明の童話。大人になり読み返すと歴史やSFの要素も垣間見れて、興味深いお話ばかりでした。
赤いろうそくと人魚
人魚が暗い海から明るい人間の町へ自分の娘を預ける。娘はろうそく屋の老夫婦に拾われ、娘が描いたロウソクが評判を呼び、海難避けのご利益とされる。
しかし、悪い香具師が言葉巧みに老夫婦を惑わし、娘を手に入れる。娘が売られたあと、一人の女がろうそくを買いに来る。
その後、神社に赤いろうそくが灯されると海が荒れ…。
おとなになって読み返してみると、物語は悲しいものの、嵐のシーンは淡々と描かれています。俯瞰で遠くから眺めているような。
そして、自らの利益のために老夫婦から人魚の娘を手に入れる香具師、金に目がくらんで娘を売る老夫婦、そしてご利益が祟りと化すと神を見捨てる人々。
「一番怖いのは人間」だなと改めて感じました。
野ばら
国境を守る二人の兵士。一人は老人でもうひとりは若者。国境警備とはいえ辺鄙な田舎のこと、いつしかふたりは仲良くなり、将棋をさしながら日々が過ぎていった。
しかしある時、両国で戦争が勃発。若い兵士は前線へ行くことになる。
老人が最後に見るのがいわゆる夢オチなのですが、なんとも切なく、少し怖い幕切れです。
眠い町
世界を旅する少年ケーが訪れた「眠い町」は、旅人が行くと必ず眠ってしまう。そこに住む老人は、愛する土地の自然が壊されることに憤り「疲労の砂」をかけていたのだった。
ケーは老人にたのまれて、開発が進む町や線路に砂をかけて線路や町の建設を休ませていたが、あるとき「眠い町」へ戻ってみると…。
自然破壊と征服に明け暮れた時代への警告のようにも感じました。
月夜と眼鏡
月夜の晩におばあさんが縫い物をしていると窓から声をかけるものがいた。それは眼鏡売りで、おばあさんは眼鏡をかけると、周りの景色がよく見えた。
そうしていると誰かが訪ねてきて…
ホラーではないのだけど、ホラーのような展開。
おそらく最初の眼鏡売りも人間ではないのでしょう。徐々に不思議な世界に引きずり込まれ、最後にはぱっと消えてしまう、ふしぎな場面転換が印象的でした。
牛女
唖で巨体のため「牛女」と呼ばれる女性は、わが子を大切に慈しんでいたが、あるとき病気にかかり亡くなってしまう。
遺された子どもは母を恋しく思い、遠くの山を見つめると、そこには牛女の姿が…。
母の無償の愛と、少しの恐ろしさ感じるお話。亡くなってもなお、子どもを見守る母性と子が親を忘れることによる報復は、よくよく考えると怖いですね。
まとめ
小川未明の童話を読み返してみて思ったのは「不思議で恐ろしい」感覚でした。
『眠い町』のオチはまるでSFのようでしたし、(『猿の惑星』や『未来世紀ブラジル』のような)わからないことが、わからないままになっている怖さを感じました。
とても新鮮でふしぎなお話。これからも読み返していこうと思います。

