『四維街一号に住む五人』は『台湾漫遊鉄道のふたり』で国際ブッカー賞を受賞した楊双子さんの小説。
日本風古民家シェアハウスに住む五人の女性の物語。
この本を読んで、台湾では日本文化が知られているのに、日本はあまり台湾文化を知らないことを実感しました。でもこの本を通じて、少しでも台湾文化を知れてよかった。
四維街一号とは
四維街一号は台中に実在する日式建築。「日式」とは日本風のこと。戦前、日本が台湾を統治していた時代に建てられた建物です。
だから畳や雨戸があり、住人たちは靴を脱いで生活しています。
台湾はそうした日式建築が多く、今でも大切に使われています。「号」がつく住所に台湾映画『海角七号』みたいだと思いました。
美味しそうな台湾料理
この小説、とにかく美味しそうな台湾料理がたくさん登場します。
「蛤仔鶏湯(ハマグリと鶏肉のスープ)」、「獅子頭(大きな肉団子)鍋」古いレシピ本の「芋泥(タロイモのスイーツ)」、生焼雞。
台湾では季節や体調にあわせた薬膳料理がポピュラーで、焼酒鶏(薬膳スープ)もそのひとつ。寒くなると補冬(冬に備えて栄養補給する)焼酒鶏には漢方薬材が使われています。
ああ、食べてみたい…。
そして、引っ込み思案の乃云が古い台湾料理本を見つけ、そのレシピを作ることで物語が進んでいきます。
古い台湾料理本は、日本語混じりの台湾語で書かれている(現在の公用語は北京語)ので、解読が大変。
でも、それを翻訳しながら苦労して作る料理は、きっと楽しくて美味しいんでしょうね。
『台湾漫遊鉄道のふたり』でも美味しそうな料理がたくさん。
百合ではあるが
愛好者の方々には申し訳ないのですが、私BLや百合など、同性愛をテーマとした作品が苦手です。
でも『四維街一号に暮らす五人』が読めたのは、性愛描写よりも登場人物の成長や変化が描かれていたから。
登場人物たちはそれぞれ人間関係に悩んだり、生活に苦しんだり。様々な悩みを持っています。
それが四維街一号で暮らし、交流していくうちに徐々に関係が変わっていきます。
特に、小鳳と知衣の関係の変化が読み応えがありました。
恋愛に関しても、百戦錬磨の小鳳の知衣への思いや知衣の小鳳への気持ちの変化が丁寧に描かれています。
料理と同じく心情の丁寧な描写が、私がジャンルの好き嫌いを超えて面白いと感じたのだと思います。
日式建築と最後の謎解き
四人の下宿人を見守る大家。なぜ彼女が四維街一号の大家になったのか。
章のはまりは大家の幼少期、従姉妹と四維街一号で育った思い出が語られます。
最期に建物を相続した「叔母」の真実と、大家がなぜ四人に見つかるように古いレシピ本を置いたのか。最後にその謎が明かされます。
そこには彼女の一族にまつわる悲しい出来事と、この日式建築を愛した女性の人生が込められていました。
それにしても成長を測る「柱の傷」を知っていたり、作中に『名探偵コナン』が登場したり。作者は日本の建築と生活に精通していますね。

