『コズミック・ガール 宙わたる教室』伊与原新

コズミック・ガール 小説感想

定時制高校科学部を舞台とした『宙わたる教室』の続編『コズミック・ガール』。

科学がテーマですが、人との出会いによって人生が救われる物語でもあります。

『宙わたる教室』の六年後

飯星佐那は科学部の発表に憧れて、定時制に転入してきた。

でも、かつての科学部の栄光は忘れられ、当時を知る人もいない。それでもめげずに科学部立ち上げに奔走する佐那。

彼女はその無鉄砲で無秩序な情熱で、メンバーを次々と獲得していく。やがてそれは、かつての科学部のメンバーを再集結させることに。

じゃがいもを使った「ハイブリッド・ペットボトルロケット」でサイエンスコンテストを目指す新生科学部。しかし、かつて科学部を導いてくれた藤竹は行方不明で…。

文藝春秋
¥1,760 (2026/06/16 02:51時点 | Amazon調べ)

科学という重力に集る人々

人との縁も星の重力ように、引きつけられて集まることで輝くのかもしれません。

新生科学部メンバーは科学と出会い、どん底から這い上がっていくのですが、それは科学だけじゃなく、人との出会いこそが大事なんです

コズミック・ガール
昭和のSFみを感じる装丁もすてき。

佐那ちゃんに出会ったことで岳人もかつての情熱を取り戻し、宇辰は犯罪を犯さずに済んだんですから。

情熱の伝播

佐那ちゃんは熱中すると周りが見えなくなるし、失礼なこともすぐ口に出しちゃう、ちょっと面倒な子。

そんな風だから当然煙たがられます。でも、そんなことで飯星佐那は止まらない。

科学部をなんとしても作りたい、コンテストに挑戦したい!

その情熱はやがて、みちる、翔太、理、宇辰らの部員を集め、大人たちも巻き込んでいきます。

さらに、かつての科学部のメンバーも再集結。現状に行き詰まっていた部長の岳人や、奥さんを亡くして意気消沈していた長嶺の心にも火を付けるんです。

いやもう、この再集結のシーンは泣きました。

佐那ちゃんの推し科学者はカール・セーガン。私も大好きです。フェルマーの最終定理に関する彼のエピソードが最高なんですよ。

朝日新聞出版
¥1,760 (2026/06/09 13:45時点 | Amazon調べ)

テーマは科学、でも実は…

コズミック・ガール』や『宙わたる教室』では、貧困や差別、ネグレクトといった社会問題も描かれています。

主人公の佐那ちゃんも、能天気に見えるけれど、厳しい学歴主義の学校で辛い思いをしています。翔太の父親はネグレクトの傾向があるし、貧乏で学力も低い。

中国出身の宇辰は祖母が残留孤児だったし、中国人というだけでイジメにあってきた過去がある。

元科学部のメンバーも順風満帆ではありません。特に岳人はディスレクシア(読字障害)のため、「前例がない」と大学院の試験を断られてしまいます。

また、定時制高校というだけで差別の学閥社会の差別対象になったり、様々な問題が降りかかります。

こうした問題を高校生たちと、それを支える大人たちが向き合って解決していこうとする姿。そこにも胸を撃たれます。

伊与原新作品

タイトルとURLをコピーしました